横浜市長選への出馬を表明した、自民党の小此木八郎衆院議員(C)朝日新聞社
横浜市長選への出馬を表明した、自民党の小此木八郎衆院議員(C)朝日新聞社

 22日、国家公安委員長を務める小此木八郎衆院議員(55)が8月に行われる横浜市長選に立候補することを表明した。小此木氏は神奈川3区(横浜市鶴見区、神奈川区)を地盤とする当選8期のベテランで、父は元通産相の小此木彦三郎氏。彦三郎氏は、かつて菅義偉首相が秘書として仕えた政治家であり、小此木氏とも家族ぐるみで関係が深い。

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 現役の閣僚が、地方自治体の首長選挙に立候補を表明するという異例の事態となったが、それには自民党の候補者選びが二転三転したという事情があった。

「自民党の横浜市議団からは、元TBSのアナウンサーで現在はフリーの渡辺真理さん(53)を熱望する声もありました。渡辺さんは横浜市生まれで、市内の中高を卒業。市のイベントでも司会を務めており、候補者として最もふさわしいとみられていました。あとは本人が首を縦に振るかどうかだったのですが、結局、うんとは言わなかった」(横浜市の政界関係者)

 現職の林文子市長(75)は2009年からすでに3期務めているが、無所属ながら選挙では自公の推薦を受けている。林氏は4選出馬にも意欲をみせているとも伝えられるが、自民党内部からは「多選批判」が起きており、候補者の選定が始まっていた。

「菅首相に近い三原じゅん子参院議員(56)や、パンケーキブームの火付け役となった元参院議員の松田公太氏(52)の名前も取り沙汰されたが、内部で行った世論調査の数字が芳しくなく、林市長が無所属で出馬した場合は”勝てない”という見通しが強まった」(官庁関係者)

 候補者が定まらない中、神奈川県知事の黒岩祐治氏(66)にも出馬を打診したようだが、固辞されたという。そこで白羽の矢が立ったのが、小此木氏だった。

 だが出馬に関しては、菅首相との間でひと悶着あったようだ。

「小此木さんも誰か候補者がいないか口説きに行ったそうですが、うまくいきませんでした。すると、菅首相は『(候補者が)いなかったら林さんでいこう』と発言をしたところ、小此木さんはかなり反発したと聞いています。(林さんが4選するくらいなら)小此木さんは『自分が横浜を変えたい』という思いが強くなり、立候補を決意して、菅首相も了承したようです。ただ、小此木さんはもともと、カジノ推進派です。しかし、野党も候補者を出してくるなかで、カジノ推進を旗印にしたら選挙を戦えないと判断し、『カジノ反対』の立場で出馬を固めたとのことです」(官庁関係者)

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上田耕司

上田耕司

福井県出身。大学を卒業後、ファッション業界で記者デビュー。20代後半から大手出版社の雑誌に転身。学年誌から週刊誌、飲食・旅行に至るまで幅広い分野の編集部を経験。その後、いくつかの出版社勤務を経て、現職。

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カジノについては「当選後」に考えればいい