とはいえ、カルト2世は家族関係やプライベートで複雑な問題を抱えているケースが多く、公にその実態が語れることはまだ少ない。まゆみさんは「2世たちの苦しみを少しでも知ってもらえれば」と取材に応じてくれた。

 まゆみさんは、人口8万人ほどの米の名産地として知られる東北の町で生まれた。父は教団幹部、母も各地を回り布教活動をする熱心な信者だった。まゆみさんも幼稚園や保育園へは行かず、週に3日は集会に通いながら、信者たちと布教活動をする生活を送っていた。

「信者はいつも笑顔で礼儀正しくいるように訓練されているので、穏やかで、とてもやさしそうな人ばかり。集会へ行けば、そうしたやさしい人たちがいつでも受け入れてくれるので、同世代の子たちと遊ぶのは楽しかった。まだ幼かったので『神に奉仕して楽園へ行く』と信じて祈る毎日でした」

 だが穏やかだった日常は、学校へ通うようになると苦痛と恐怖のくり返しに変わった。

 もともと一般的な常識とはかけ離れた価値観で育てられたまゆみさんは、次第に自分の考え方や日常生活が同級生とは異なる現実に戸惑い、心を悩ませることになる。

「学校生活では教義上の制限が加わるNG事項も多く、困りました。たとえば校歌や国歌を斉唱したり、運動会の騎馬戦や生徒会に立候補したりすることも制限されます。合唱隊に入ったら、賛美歌が歌えない。友達と誕生日もお祝いしてはダメ、テレビはなく、漫画などもすべて父と母が検閲して許可されたものだけ。友達になるのも父から許可が下りた人だけで、『サタンの悪影響がある』『頭が悪くなる』という理由でその子の家では遊んではいけない。学校で七夕の飾りをしても、神の教えに反するからと飾れない……。目立たないように便宜を図ってくれる先生もいましたが、一人の生徒のために、やはり大変だったと思います」

 修学旅行で訪れた京都では信仰上、名所旧跡を巡ることに罪悪感があり、ホテルにこもって一人で泣いていた。

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虐待された子どもに接して芽生えた疑問