現在は会社員として勤務しているが、「自分から能動的に動くことはあまりない」という。

「他人との距離感がわからない、一般常識がない、なじめない、“普通”の感覚が分からないという自覚があるので、あまり世の中のことに興味が持てないのです。長い間、神の考えは人間にはわからないから、何も考えず神が言われた通りにやればいい、という思考で生きてきたので、自分で何かを切り開いていくといった考え方にならないのかもしれません」

「カルト」は、ある日突然誰かの日常に入り込んでその後の人生を大きく左右する。その親に育てられた2世は、親や教団側からの強い働きかけ、特有の価値観で縛られ、教団の教理と価値観が『絶対』であり、それがすべてだと教え込まれる。

「カルト2世には選択肢がありません。ただ人が一生をかけてやっている宗教を軽んじる気持ちにはなれず、でも同時に自分が信者時代にやってきたことのバカらしさを痛感しています」

 カルト2世は、その宗教から離れた後も生きづらさを抱えてしまう。本人からは言い出しづらい過去であるがゆえに、周囲から理解されるのはなかなか難しい。だから、未来にも不安が残る。

「今は、付き合っている人がいます。でも結婚はどうでしょう……。教団から離れたとはいえ、信者同士の結婚を望んでいた両親はいい顔はしないだろうし、相手の親御さんのこともありますし。やっぱりいろいろと難しいですね……」

 そう話すまゆみさんの表情は、少し寂しそうだった。(取材・文=笠井千晶/AERAdot.編集部・作田裕史)