だが、もうひとつの理由として挙げられた登板間隔の乱れという問題は、前田一人で解決できるものではない。今季、前田がローテーション通りに登板できたのは開幕序盤の数試合だけだ。ツインズは、4月中旬にチーム内で新型コロナの陽性者を出してしまったことで3試合が延期され、さらにピネダなどの複数の投手が怪我で離脱してしまったことで、先発はローテーション通りに回っていない状態が続いている。その結果、前田は当初の予定とは違う日に投げるスライド登板を余儀なくされており、コンディショニングが追いついていないとの指摘がある。

 試合の中で復調を目指し、チームに迷惑をかけたくないと考える前田にとって、負傷者リスト入りでの離脱は無念なことかもしれない。だが、各記者はこの今回の離脱を前向きに捉えている。ライアン記者は「チームに貢献したいという気持ちが強いのは素晴らしいことですが、負傷者リストに入ることは決して恥ずべきことではありません」と擁護し「本調子でない中で無理に全力プレーをするより、今は完全に回復するまで休んだ方が良い」と述べた。クリスティー記者も同様に「前田には一度リセットするタイミングが必要だった」と前向きだった。そして、彼らによれば、前田には離脱中に直すべき点が2つあるという。

 まずは、長いイニングを任せられる状態に戻すこと。今季の前田は、先発した試合のうち6イニング以上投げられた試合は1度しかない。前田だけに限らないが、ツインズの先発陣は長いイニングを投げきれないことが多い。あわせて現在ツインズのリリーフ陣は不安定な状態にもあり、メーガン記者は「1回でも長いイニングを任せられる状態になってほしい」と願う。

 次は制球力を取り戻すことだ。クリスティーナ記者は「いま、最も足りていないもの」だと指摘する。離脱前の前田は、昨季ツインズのサド・レバインGMから「球界最高のレベルだ」と賞賛されていたスライダーも、その勢いが鳴りを潜めてしまっていた。さらに、ストレートの威力の落ち方は更に深刻で、期望被長打率は昨季.114だったのに対して、今季は.786と異常な増え方をしている。事実、今季は1試合に3本塁打を浴びてしまったこともあり、長打に苦しむ場面が多い。クリスティー記者は「昨季のようにピンポイントに投球できる制球力があれば、これらの数字は必ず改善され、成績も見違えるほど良くなるだろう」と語り、休養中にいま一度、自身の投球を見直すことを願っていた。

 確かに、チームにとって先発1番手の離脱は大きな損失であるが、完璧な状態ではない前田があのままの投球を続けていたら、周囲の期待をさらに裏切る結果となっていたかもしれない。報道によれば、前田は2週間以内に復帰すると予想されている。この間を利用して、現地で指摘されている課題に取り組み、万全の状態で復帰することができれば、昨季のような輝きを取り戻せるかもしれない。ツインズのエースとして、再びその存在感を示すことができるか、その復活に期待がかかる。(澤良憲/YOSHINORI SAWA)