だが、日本と中国は大きな懸念事項はなく、比較的安定した関係を築いてきたが、そこにアメリカと東京五輪・パラリンピックが絡んでくるとややこしくなる。

「アメリカが東京五輪を歓迎する場合、中国がどう出るかだ。アメリカと並ぶ世界のスポーツ大国、中国の不参加はないだろうが、新型コロナウイルス感染拡大を理由に選手団の縮小は考えられる。そうなれば、中国に追随する国もあるだろう。また、中国が台湾を参加させないよう動くことも考えられる。二階幹事長が今後、どう動くか。バランスが難しくなる」(自民党幹部)

 菅政権の生みの親でもある二階幹事長は中国との強い関係を誇る。

「二階氏の外交と言えば、まず中国です。アメリカが中国と対立を深めても日本と中国が衝突することがなかったのは、二階氏の力です。中国と懸案事項があれば、自分が出て、話をすれば理解が得られという自負もある。秋には自民党総裁選もあるので、菅首相がアメリカの顔色ばかり見るようなら、二階氏は黙っていないでしょう」(二階派国会議員)

 外交ではアメリカと中国、内政では二階氏と安倍前首相との「板挟み」になっている菅首相。そこに新型コロナウイルスの感染拡大、東京五輪・パラリンピックが加わり、難しい舵取りが迫られる。

「菅首相は帰国早々、緊急事態宣言をまず、大阪、兵庫などで出さざるを得ない。大阪の感染拡大は他県の比でないくらいに深刻な状況です。前回の宣言を前倒しをした判断は大失敗でした。その後、東京にいつ、出すか。このままだとゴールデンウイーク前に急拡大しかねません。本来は4月以降、ワクチンが普及し、日常を取り戻していく、というシナリオだったはずですが、供給量の絶対数が足りません。東京五輪をやるにも当然、ボランティアやスタッフのワクチン接種も必要ですが、こんな状態で優先接種はできませんから見切り発車でやるしかない」(政府関係者)

 東京五輪・パラリンピック参加予定の各国の事前合宿は短縮や中止が相次いでいる。

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4.25補選・再選挙の負けは織り込み済