■小池都知事の「県境を越えないで」はパフォーマンスが入っている

――世界的なワクチン獲得競争が激しくなる中で、日本は確保できるのか

 アストラゼネカの安全性に不安が出てきたのはつらいですね。我々としても戦略が狂ってきている。高齢者などリスクのある人たちはファイザー、モデルナを打ってもらい、リスクの低い人たちにアストラゼネカを打ってもらうということを考えていた。それが、ヨーロッパでは、「アストラゼネカはリスクの低い人たちが打つべきワクチンではない」と言っていますから。戦略が違ってくる。だから、ファイザーにもっとお願いする必要がある。今日、菅首相がファイザー首脳と会談するようだが、とにかくもらえるだけほしいと言うしかないですね。

――率直に語りますね。

 サイエンティフィック(科学的)なことを積みかさねてコメントしていますからね。例えば、小池百合子都知事が「県境を越えないで」と言っていることは気になっています。東京に閉じ込めるともっと危なくなる。そういう科学的なシミュレーションがあるんです。移動制限すればするほど、東京や大阪では感染者が増える。危険な環境に閉じ込めるわけだから。そうではなく、接触をなるべく断つという条件で、感染率の低い地方に行く方が安全なわけです。車で移動して、なるべく人に会わずのんびりしてくださいと。小池都知事の発言はパフォーマンスも入っているのでしょうね。逆に、変異株を持ち込むリスクがあるので、「大阪に行くな」というのはわかります。

 マスク会食も推奨されていますが、実はこれにエビデンス(科学的な証拠)はない。誰も実験したことがない。兵庫県知事が「うちわ会食」を計画して批判を浴びましたが、飛沫を止めるならうちわにも意味がある。要するに、飛沫を止めるなら、マスクもうちわも一緒。優劣も決めていないのに、うちわがダメで、マスク会食がいいというのは、何のエビデンスがあっているのか、私は聞きたいですね。

 私は、内閣に入っていないから、ここまで言える。参議院議員で、医者上がりで、偉くなろうということもないですから。ただ、党内でも国会議員でも、コロナについては一番知っていると思いますよ。世界の論文を毎日のように読んでいます。良いものを選んで、翻訳してネットで紹介しています。今は500ページ以上になっている。京大の山中伸弥教授にも評価されていますよ。

 特に新型コロナは科学的なコントロールが必要です。そこで科学的ではない取り組みや発言が独り歩きするのがとても気になっています。そうしたことを一つ一つ質していくのが私の役割だと思っています。

(構成/AERA dot.編集部・吉崎洋夫)

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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