今年3月、新型コロナウイルスワクチンを接種する菅義偉首相 (c)朝日新聞社
今年3月、新型コロナウイルスワクチンを接種する菅義偉首相 (c)朝日新聞社
古川俊治参議院議員。自民党新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチーム事務局長、医師・医学博士 (c)朝日新聞社
古川俊治参議院議員。自民党新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチーム事務局長、医師・医学博士 (c)朝日新聞社

 新型コロナウイルスの感染が再拡大するなか、政府は埼玉、千葉、神奈川、愛知の4県に「まん延防止等重点措置」を適用することを決定した。二階俊博・自民党幹事長から「五輪中止も選択肢」発言も飛び出すなか、五輪開催に向けたカギともなる「ワクチン接種」は、遅々として進んでいない。この現状を自民党はどうとらえているのか。自民党の新型コロナウイルスに関するワクチン対策プロジェクトチーム事務局長の古川俊治参議院議員に聞いた。

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■「ワクチンより治療薬」という頭があった

――二階幹事長が東京五輪・パラリンピックについて「感染状況次第で中止もあり得る」と発言しました

 それは政治判断としてある。官邸と話して決めるのでしょう。我々もやりたい気持ちもあるが、実際にこういう状況になって、開催が非常に困難なのは事実です。世論からも「開催はどうなのか」というのはある。去年の段階では、「やるならこういう形でやる」という正確な判断は難しかったと思います。そこをあえて「やる」と言ってきたのだから、それならその体制を整えようということでやってきました。そこは大きな政治判断で、どちらになっても決めた方向に動くということ。新たな政治判断をするのであれば、その中でやるしかない。ベストを尽くすしかない。

――医療従事者などのワクチン接種率は20%強、今週始まった高齢者への接種も全国で1日1000人台にとどまるなど、ワクチン接種が進んでいません

 その実態はあります。イスラエルやイギリスは国民の半分がワクチンを接種しているという状況なので、「早くワクチンを打って8月に五輪をやろう」という話になるのでしょう。しかし残念ながら日本は少ない状況になっています。

 国としても早くワクチンを打ちたかったですよ。ただ、ワクチンがこんなに早くできるというのは、国としても考えていなかったところでしょう。まずは治療薬ができるという頭だった。だからアビガンに飛びついたところがある。ワクチンを作るのに今まで10年かかっていたので、こんなに早くできたことは驚きでした。「メッセンジャーRNAワクチン」と呼ばれる技術でワクチンを作ったのは歴史的に初めてですから。

 特に日本のワクチンの歴史は、残念ながら失敗を繰り返してきました。国民の性質としてゼロリスクを求めるというところがある。リスクを嫌う国民ですよね。そういう国民性もあって、すごく慎重にいかないといけないという意識が働いたのも大きいと思います。

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吉崎洋夫

吉崎洋夫

1984年生まれ、東京都出身。早稲田大学院社会科学研究科修士課程修了。シンクタンク系のNPO法人を経て『週刊朝日』編集部に。2021年から『AERA dot.』記者として、政治・政策を中心に経済分野、事件・事故、自然災害など幅広いジャンルを取材している。

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五輪前のワクチン接種は「希望的な観測」だった