英語講師・安河内哲也さん (提供写真)
英語講師・安河内哲也さん (提供写真)

 春になったし英語を学びなおしたい、でも難しいテキストは手につかない……という人は、まずマンガの英語版はいかが? 東進ハイスクールの名物英語講師・安河内哲也さんがおすすめの英訳コンテンツを教えてくれた。現在発売中の『AERA English 2021 Spring & Summer』(朝日新聞出版)から紹介する。

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「最近はスピーキングの重要性ばかりお話ししていますが、英語の読書もかなりしてきました。シドニィ・シェルダンのミステリーものや、ジョン・グリシャムの法廷ものなど、アメリカ人作家にどハマりした時期も。でも最初に読みふけったのは、日本文学の英訳本です!」

 開口一番、勢いよく語るのは東進ハイスクールの名物英語講師、安河内哲也さん。英語の多読に目覚めたのが、日本の作品だったという。

「学生時代、ペーパーバックで夏目漱石、宮沢賢治、山田詠美、村上春樹、吉本ばななと、とにかく読みあさりました。基本的に日本語で読んでおもしろかったものを、2 回目は英訳で読み進めるパターンが多かったかな。ストーリーが頭に入っているので、英単語の意味がわからなかったり、理解不能なセンテンスがあったりしてもストレスにならず、軽く読み飛ばせるのがよかったですね」

 それまでは教科書や参考書で英文を読み込み、わからない単語は辞書を引いて、一語一句理解する精読的な読み方しかしてこなかった安河内さん。日本文学の英訳に出合ったことで、「全体でざっくり意味をつかんでサクサク」読書ができるようになった。では、途中で挫折せずに読破するコツは?

■日本語でも楽しく読める作品を選んで

「『日本語でサクサク楽しく読めた作品』を選ぶことです。たとえば、『吾輩はである』は私が最初に手にした日本作品の英訳本でしたが、小難しくて1章が終わったあたりでギブアップ。英語のタイトルかつ冒頭の一文は、I am a cat.と超簡単なのに、人間たちの会話が異様に長くてちんぷんかんぷん。同じ漱石でも『坊っちゃん』は、ぐっと短く簡単だったので最後まで読めました」

『吾輩は猫である』は原書で読んでも難解とされる一冊。代表作だからと選択し"撃沈"したこの経験から、日本語で読んだときの簡単さと楽しさが作品選びの基準になったという。

「初心者は、内容が哲学的で難しい純文学の英訳より、謎解き要素も楽しい、東野圭吾さんのような大衆小説から入ったほうが読みやすいでしょう。それから短編集もオススメ。ショートショートの名手と言われたSF作家、星新一の英訳はお気に入りで、何度も読み返しました」

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マンガの英訳版はより簡単で入門に最適