誤解3 聞こえにくくなるのは60歳以降からだ

「聞こえが悪くなるのは60歳を過ぎてからだろう」と思うかもしれません。でも実は20代後半から、高音域の聴力レベルの低下は少しずつ進行し始めます。最初はモスキート音(蚊の飛ぶような高い音)などの非常に高い音が聞き取りにくくなります。

 加齢性難聴は、年齢を重ねることで内耳の中の蝸牛にある有毛細胞がダメージを受け、音を感知したり、増幅したりする本来の役割が障害されることで起こる感音難聴です。一般に左右の耳が同じように聴力が低下していきます。

 年齢とともに徐々に聴力レベルは低下していきますが、一部の音域の低下であれば生活のなかで不自由することはないため、40代になっても自覚のない人がほとんどです。それが60代になると聴力が低下する音域が増え、聞こえの悪化を感じる人が急激に増えてきます。70歳を超えると低音域も含む、ほとんどの音域で聴力が低下してしまいます。

 日本人の65~74歳では3人に1人、75歳以上では約半数が難聴に悩んでいるといわれています。ただし、聴力の低下の程度や低下し始める年齢については個人差が大きいため、80歳を超えても、聞こえがそれほど悪くない人もいます。

誤解4 補聴器はいつでも簡単に作ることができる

 補聴器は、耳に入った音を周波数ごとに増幅させて、聞き取りに必要な音の刺激を脳に送るための医療機器です。眼鏡を作るように、お店で手軽に作れるものではありません。その人に合わせた調整が必ず必要になります。実際にことばや音を認識して「聞く」役割自体は「脳」が担っています。

 低下した聴力に合わせて補聴器を調整するには、まず自分の聞こえを医療機関で検査します。そして音の刺激の少ない状態に慣れてしまっている「難聴の脳」のリハビリをおこなうとともに、時間をかけて補聴器を調整していきます。

 約2~3カ月間、補聴器を朝起きてから寝るまで装用しながらのリハビリと、言語聴覚士による定期的な調整が必要です。それによって、徐々に脳が変化し、補聴器に慣れていきます。

 リハビリ期間中は補聴器をつけた状態で音の聞こえを測定し、足りない音や大きすぎる音がないかを確認し、調整を繰り返します。目標の音量まで到達したら、ことばの聞き取りの改善度合いを確認し、ようやく装用者にフィットした補聴器になります。

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補聴器は購入後も定期的なメンテナンスが必須