「がん」と診断される前にすべきこと 父をすい臓がんで亡くした現役医師が語る (1/3) 〈dot.〉|AERA dot. (アエラドット)

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「がん」と診断される前にすべきこと 父をすい臓がんで亡くした現役医師が語る

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「がんになってから考えるのでは遅い」と話す乾医師(撮影/写真部・高野楓菜)

「がんになってから考えるのでは遅い」と話す乾医師(撮影/写真部・高野楓菜)

 もし家族が末期がんと診断されたら―。東京大学医学部を卒業し、現在、銀座アイグラッドクリニックの院長を務める乾雅人医師は、2019年、父親をすい臓がんで亡くした。父・兄ともに医師である医療一家でありながら、父の闘病中は方針をめぐり「家族間での意思決定や感情の整理に難渋した」と振り返る。家族が、がんと診断されたら、まず何を考えるべきなのか、そして周囲の人間はどのようにがんと向き合っていけばよいのか。実体験をもとに乾医師に話を聞いた。

【図解】巣ごもりによるがんリスクはこちら

*  *  *
――父親が、がんと診断された当時の様子を教えてください。

2019年春、すい臓がんと判明しました。当時の父は64歳で定年間近。親子で「訪問診療クリニックの開業でもしようか」と話し合っていたころの出来事でした。発覚した時点で「ステージIV」の末期がんだったので、手術は適用外、抗がん剤治療を行った後に緩和ケアに移行する、という選択肢しかありませんでした。がんの確定診断に至る過程で感染症を合併し、抗がん剤治療の開始が遅れた上に、初回抗がん剤治療の約1週間後、脳梗塞を合併しました。末期がん発覚からわずか1カ月後には、会話や食事などの日常生活に支障をきたす、半身まひの状態になってしまいました。こうした不運が重なり、抗がん剤治療もできなくなりました。

――ご家族に与えた影響も大きかったのでは?

残念なことに、家族間で多少の意見が食い違い、感情的な対立が起きました。そもそも「膵臓がんのステージIV」とは基本的には手術は適用されず、抗がん剤で進行を制限しながら、どのように緩和ケアに移るか、というのが常道です。しかしながら、脳梗塞の合併により日常生活に支障を来す(Performance Statusが悪化)状態になったため、抗がん剤も適応外となりました。医師である私と兄は「緩和ケアについて具体的に話し合いをする段階だ」と判断し、母親には「ホスピスなのか自宅なのか、どこで最期をみとりたいか決めておいた方がいい」と伝えました。私としては「父との時間を大事にしてほしい」という思いだったのですが、感情面での配慮が足りませんでした。母は突然のことに現実を受け入れることが難しく、その状況で意思決定、決断を急かしてしまいました。

――最終的にはどのような結論にいたったのですか?

当たり前ですが、本人の気持ちが一番。次に、キーパーソンである母の気持ち。我々兄弟は情報の整理や判断までは出来ますが、意思決定、決断に関しては出る幕ではないと考えていました。そして、決断をする人が一番負荷が掛かります。後から「ああすれば良かったかな、こうすれば良かったかな」と後悔することがないよう、”医師として家族として”その時その時の最善の選択肢を提示することを心掛けたのですが、家族ゆえでしょうか、真意がうまく伝わらなかったりもしました。本来一丸となるべき家族が対立してしまっては元も子もないのですが……。父は診断から約5カ月後に亡くなりました。もちろん父の死はショックでしたが、家族の衝突も辛い経験でした。今後そういった軋轢に苦しむ人が減るよう、「意思決定」の材料を皆さんにお伝えしたいと考えています。


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