ZOZOマリンスタジアムをバックに。「ファッションの世界は奥が深いです。まだ道半ばだと思っています」(写真提供/ZOZO)
ZOZOマリンスタジアムをバックに。「ファッションの世界は奥が深いです。まだ道半ばだと思っています」(写真提供/ZOZO)

 ZOZO代表取締役兼CEOの澤田宏太郎さんは早稲田大学理工学部で工業経営学を専攻した経歴を持つ。『早稲田理工 by AERA 2021』のOBインタビューで、自身の転職経験やZOZO前社長の前澤友作さんとの出会い、次世代へのエールなどを語ってくれた。

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 ファッション通販サイトのZOZOがヤフー(現Zホールディングス)と資本業務提携契約を締結した2019年9月、前任の前澤友作さんに代わりZOZOの新社長となった澤田宏太郎さんは記者会見の中で、「リアリスト」「ニュートラル」「安定感」という三つの言葉を自身の信条として挙げた。

「前澤とは真逆」

 報道では、澤田さんのそんな一言も話題に。

「前澤さんは見ての通り天真爛漫、やんちゃな大人。でも結構ナイーブな一面もあるんです」

 社長就任を打診されたのは、会見の1週間前だったという。

 澤田さん率いる新生ZOZOが目指すのは、カリスマリーダーの存在を前提とした「トップダウン経営」から「社員一人ひとりと、組織の力を生かす経営」への移行だ。コロナ禍でネットショッピング需要が高まったこともあり、20年10月末発表の中間決算は過去最高益を達成。新しいステージに入ったZOZOの今後には、アパレル業界、EC業界のみならず、年間820万人の利用者も熱い視線を送る。

■「主役は社員だ」 寄せる期待と信頼  

 大学での専攻は、工業経営学だった。

「商学部と経営学部と理工学部を足したような、当時としては新しいことを学べる学科でした。組み合わせ最適化問題とか巡回セールスマン問題とかそういったことをやっていたんですが、あまり真面目に勉強していなかったので、それ以上のことは言えないです(笑)」

 卒業後はNTTデータに就職し、4年後に系列のコンサルティング会社に出向。その後も転職を経ながら、コンサルタントとして経験を積んだ。06年からは、ZOZOの前身であるスタートトゥデイのコンサルティングを担当し、前澤さんと出会った。

「当時在籍していた会社にスタートトゥデイから仕事の依頼が来たとき、僕よりITに詳しい人の方が向いていると思い、周りに声をかけたんです。でも、たまたま適任者がいなかった。もしあのとき『やりますよ』っていうマネージャーがいたら僕の人生はZOZOと交わることはなかったかもしれません」

 2年後には前澤さんの誘いを受けてスタートトゥデイコンサルティングを設立し、13年にはスタートトゥデイの取締役に就任。新規プロジェクトの立ち上げ、前澤さんと社員の橋渡しに奔走した。

「取締役とはいえ、意識的には現場に近かったと思います。当時はまだ人手も足りず、組織も未熟で、シュートを決めようとゴール前に張り付いている前澤さんにパスを出せる社員がいなかったんです。僕の役割はフィールドを走り回って、前澤さんと社員の間をつなぐことでした」

 現在ZOZOグループは社員数も1000人以上に増え、彼らの発想力やチャレンジ精神こそが企業の原動力。「僕も頑張る。だが主役は君たち社員だよ」。社長就任直後に社員にかけた言葉は、この12年間、ともに成長してきた社員への期待と信頼が込められている。

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