そんな山田氏はおじさんの懐に入るのが上手だったようで、省内でもかわいがられていたという。

「とっつきやすいソフトな雰囲気で、見目麗しく、オジサマ対応がうまい。出世するのもよくわかります。当時は働く子育て世代の女性は貴重だったので、やめられると困るという事情もあって、上からは大事にされてきたのだと思います」

 水野さんは直属の部下ではなかったが、山田氏の仕事ぶりも見てきた。残業は「すごくしていた印象」で、深夜2時、3時まで平気で残っていたが、常にひょうひょうとしていて、疲れていてもつらそうな様子はほとんど見せなかったという。その働きぶりから周囲の評判も上々だったが、時には「自分で物事を言わない人」「自分で物事を決めない人」という評価も聞こえてきたという。

「与えられた仕事は淡々とこなす、ソルジャータイプです。とっぴな発案や政策に対する言及はあまりしません。上の人の意見には反対せず、上が『A』と言ったら『A』。下に対しては容赦なく仕事を振り、理詰めで詰めていく感じでした。でも、激高したり、パワハラをしたりするタイプではない。常にひょうひょうとしています」

 また、特に水野さんの印象に残っているのが、国際政策課長時代に、大臣や政務官の出張手配をしていた場面だ。職員の作成した旅程表を山田氏がチェックしていた際、<移動時間・徒歩1~2分>と記された箇所について、「歩けるの?」「何分かかる?」「景色はきれいなの?」と細かく詰められ、同僚が苦笑いしていたという。

「とにかく先回りして、細やかに気を利かせられる人。目上の人の心の機微を敏感に察する、察知能力の高い人です。なので政治家の言うことに対しては否定せず、忖度もできるのだと思います」

 それゆえ、失言はしないタイプだという。

「公の場での不用意な発言は、本来するような人ではありません。だからこそ、『飲み会を絶対に断らない女』という発言をしたことは、私には意外でした」

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「後進に悪い影響がないか心配」