この話を読んだとき、新型コロナウイルスと結びつけてしまった。沖縄の離島は昔から、島に持ち込まれるウイルスに神経を使ってきた。小さな島では疫病が一気に広まってしまう。昔はウイルスの存在を知らなかったから、悪霊とひとくくりにされてはいたが。

 考えてみれば、日本に残る風習も音が重要な要素にも思える。「なまはげ」の動画を見ると、扮した男性が発する、「おーッ」という低い声が響く。節分の「鬼は外」にしても、大声を発しないと鬼が出ていかないといわれている。

 昔、鬼とか悪霊とされたものが、いまは軍のクーデターや食糧難にすり替わったのかと考え、実は鬼や悪霊もときの政権や生活苦、疫病ではなかったかと思いが至る。騒音や大きな声には、そんな人々の苦しみが宿っている? たしかにミャンマーの鍋を叩く音は切ないが。

■下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(毎週)、「たそがれ色のオデッセイ」

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下川裕治

下川裕治

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)/1954年生まれ。アジアや沖縄を中心に著書多数。ネット配信の連載は「クリックディープ旅」(隔週)、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週)、「東南アジア全鉄道走破の旅」(隔週)、「タビノート」(毎月)など

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