発言は夫人の本心でもあり、結果として、夫の政治活動の弱点をカバーしたというわけだ。

 実はこれまでも、この「トランプ氏は大統領にふさわしいか疑問だけれど、メラニアさんには好感が持てる」という声は、日本でも少なくなかった。

「氷の微笑」「冷たい鉄仮面」などといわれてきたメラニア夫人の印象を変えたシーンといえば、来日時に皇后雅子さまと歓談したときの様子だろう。それまでメラニア夫人は表情は硬く、感情が読み取りにくかったが、雅子さまと対面しているときにはリラックスした笑顔をみせた。テレビやネットで映像や写真が流れると、「メラニアさん、人柄は悪くないのかな」「なりたくてなったわけではないファーストレディ?夫に押し付けられた役割に苦労をしているのかも」といった同情を寄せるコメントまであった。

 また、昨年の米大統領選の遊説では、夫の手を払いのける不機嫌な様子がしっかりとテレビカメラに収められていたが、それによってイメージが低下するどころか、「いつも夫唱婦随なんて、やっぱり無理だよね」と、人間らしさが垣間見えた瞬間と捉えた人が多かったようだ。

 メラニア夫人の本心はどこにあったのかはさておき、ファーストレディとしての4年間の働きはどう評価すべきなのか。

 CNNの最新の調査結果は厳しいものだった。1月19日、「メラニア夫人、不支持が支持率を上回る」と世論調査の結果を報じた。不支持が47%、支持が42%だった。報道によると過去と比べてもっとも低い水準で、記事では「嫌われ者」というイメージが強いヒラリー・クリントン氏よりも低い支持率でホワイトハウスを去ることが強調されていた。世論調査は、1月9日から14日にかけて全米の成人1003人を無作為に抽出、固定電話もしくは携帯電話で質問したという。

 この結果について、メラニア夫人の支持が低いと解釈できるかというと、そう簡単な話ではないようだ。

「全体ではメラニア夫人支持が42%にとどまりますが、トランプ支持層は85%が支持し、一方のトランプ非支持層では18%とあきらかに支持層で見方が異なっています。分極化の中で、全体的には、トランプ氏の支持率が影響したということでしょう。メラニア夫人の演説公開が調査の前だったら、数字は、特にリベラル派で改善したような気もしています」(前嶋教授)

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