山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師
写真はイメージ(GettyImages)
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 日々の生活のなかでちょっと気になる出来事やニュースを、女性医師が医療や健康の面から解説するコラム「ちょっとだけ医見手帖」。今回は「冬に引き起こされる脱水への注意」について、NPO法人医療ガバナンス研究所の内科医・山本佳奈医師が「医見」します。

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 寒さが一段と厳しくなってきましたね。夏に比べると汗をあまりかかない冬ですが、実は季節関係なく身体からは水分が自然と失われています。そのため、水分の摂取量が減りがちな冬も、脱水を引き起こす可能性があるため、注意が必要です。

 そこで、今回は、冬でも注意が必要な脱水についてお話ししたいと思います。

 冬に引き起こされる脱水には、主に3つの要因が挙げられます。

 まず1つ目は、空気の乾燥です。冬は湿度が低くなりますが、そもそも湿度とは空気中に含まれる水蒸気の量のことです。温度が高いと空気中に含まれる水蒸気量は増え、温度が低くなると含む水蒸気量は減少するため、気温の低くなる冬は空気中に含まれる水蒸気量が減り、乾燥してしまうというわけです。それに加え、近年の住宅は気密性が高いために湿度が上がらず、暖房器具の使用によって室内は乾燥しがちです。

 このような環境下では、皮膚や粘膜、はく息などから自然と水分が失われてしまいます。これを、不感蒸泄と言います。不感蒸泄は、1日あたり約900ミリリットルと言われていますが、気温が低く、湿度が低くなるほど、失われる水分量が多くなることが報告されています。冬は、私たちが気付かないうちに体内からどんどん水分が失われてしまっているというわけです。

 2つ目は、飲水量の不足です。夏と比較して喉の渇きを感じにくく、また汗をかいている実感がないのに加え、身体を冷やしたくない、夜間トイレに行くのが嫌だといった理由から、水分の摂取をどうしても控えてしまいがちです。

 3つ目は、感染性胃腸炎によって引き起こされる嘔吐や下痢といった症状です。嘔吐や下痢によって、それらに含まれる水分に加え、ナトリウム、ミネラルといった電解質も失われてしまいます。そのため、普段よりも脱水症に陥るリスクが高まってしまいます。インフルエンザを含む風邪によって高熱が出た際にも、体温を調節するために汗をたくさんかくため、水分が失われがちです。

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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