冬に多いノロウイルスやロタウイルスといった感染性胃腸炎の際は、水分を補給し、脱水を防ぐことが大切です。嘔吐や下痢のほか、汗をかくことで、水分だけでなく、電解質も失われています。水だけを飲むのではなく、電解質を含む飲料によって水分補給をすることがとても大切です。

 最後に、冬といえばこたつ、ですよね。こたつの中で寝ないようにすることも、大切な脱水予防のひとつです。こたつの中は、人間の体温よりも高い温度に設定されています。そのため、こたつの中に入っている体の部分はどんどん熱くなっていってしまいます。私たちの身体は、体温を下げようと汗をかくのですが、こたつのよって引き続き温められ続けてしまうため、さらに汗をかくことによって、体温を下げようとします。ただし、こたつに入りながら寝てしまっては、体内の水分が不足しているという体の変化に気づかず、体内は水分不足に陥るというわけなのです。

 余談ですが、脱水状態になると血液が濃縮されるため、血栓ができやすくなってしまいます。血栓によって血管が詰まると、脳梗塞や心筋梗塞など命に関わる病気を発症することにも繋がります。また、こたつの中は狭いため、ベッドとは違い十分な寝返りを打つことができません。そのため、同じ姿勢を長く続けることになり、腰や肩などの筋肉や関節への負担となり、腰痛や肩こりも引き起こしてしまうことにもつながってしまいます。

 電気毛布や電気カーペットの使用にも注意が必要です。体全体が温まるため、寝ている時に使用すると体温調節ができなくなり、こたつと同様に脱水を招く恐れがあるだけでなく、低温やけどを起こす危険性もあるのです。

 それに、乾燥を防ぐことは、風邪対策にも繋がります。喉や鼻などの粘膜が乾燥すると、粘膜のバリア機能が弱くなり、免疫が働きにくくなってしまいます。そうすると、のどや鼻の粘膜からウイルスが侵入し、風邪を引き起こしやすくなってしまうからです。

 脱水の予防には、夏だけでなく、冬でもこまめな水分補給が大切です。脱水は夏しか起きないと思っていませんでしたか? 寒さが一段と厳しくなってきた今、是非こまめな水分補給を心がけてくださいね。

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。ときわ会常磐病院(福島県いわき市)・ナビタスクリニック(立川・新宿)内科医、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員

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山本佳奈

山本佳奈

山本佳奈(やまもと・かな)/1989年生まれ。滋賀県出身。医師。医学博士。2015年滋賀医科大学医学部医学科卒業。2022年東京大学大学院医学系研究科修了。ナビタスクリニック(立川)内科医、よしのぶクリニック(鹿児島)非常勤医師、特定非営利活動法人医療ガバナンス研究所研究員。著書に『貧血大国・日本』(光文社新書)

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