「でもマンガが大事で、マンガが大好きなのに、どうして捨てなきゃいけないの? あなたは子どものためだけに人生を生きているわけではないですよね。子どものためにどうして自分の大好きなモノをあきらめるんですか? それでは悲しすぎます。マンガ本をしまう場所をつくりましょうよ?」

 最初、お母さんの反応は半信半疑でした。

■大好きなマンガ本を捨てずに、読書部屋をつくる

 マンガ本の場所を探して、家の中をあちこち見て回ると、屋根裏に収納部屋があるのを発見しました。

 そこには引っ越しのときに入れっぱなしにしていた段ボールや使っていないモノたちがいっぱい入っていました。「ここにあるのは、大好きなモノですか?」と聞くと、「いえ、そんなことはありません。何が入っているかもわからないし」と答えるので、「じゃあ、それ、一回おろしましょう」と、収納部屋の段ボールやモノたちを全部外に出してみました。

 すると収納部屋が、小さな一人暮らしの部屋くらいはある広さだったことがわかったのです。

「ここをマンガ部屋にしましょう」と私が提案すると、お母さんはびっくりして「マンガなんか、いいんですか?」と不安そうな顔をします。「だって、マンガが大好きなんですよね。たまにはゆっくりマンガを読む一人の時間がほしくないですか?」と聞くと、「はい、ほしいです。だからいつも、電車の中で『やっと一人になれた』とほっとしています」と答えるのです。

「電車の中?」と私は思いました。「意味がわかりません。電車の中じゃなくて、自分の家の中にそれがあったらうれしいでしょ?」

 そして屋根裏の収納部屋にマンガ本をみんな上げて、壁一面に並べて、座いすと照明を置いてみました。すると、マンガ喫茶より素敵なこぢんまりしたマンガ部屋ができあがったのです。

 お母さんは自分だけの部屋ができたのを見て、うれしくて、泣きだしてしまいました。

 こんなふうに、大好きなモノで囲まれた空間をつくると、幸せにすごせる時間が生まれます。「うちには収納部屋なんてない!」「そんなに部屋数はない!」と言う人でも大丈夫です。ひと部屋がなければ、片隅でもかまいません。 リビングのはしに自分の好きなモノだけを置いたスペースをつくるだけでも、夢が現実になります。