マリンレーダシステム、ドローンなども新たに投入

 カプセルは高度約10キロで大気圏突入時に焼け焦げた覆いを分離。同時にパラシュートが開き、ビーコンを発信しながら降下する。

 この電波信号をとらえるのが着地予想エリアの周囲5カ所に配置する方向探索用アンテナだ。各局が受信した電波の方向の交点が着陸地点となる。

 はやぶさ2で新たに取り入れた探索装置もある。それが「マリンレーダシステム」。漁船などに積まれる小型のレーダーで、「電波を出してパラシュートからの反射波をとらえて方位と距離を測定します。ビーコン送信機に異常があった場合にも対応します」。

 着地後は地表のアンテナ局は地平線に隠れてしまい、ビーコンが受信できなくなる。そのため、アンテナを搭載したヘリコプターで上空からカプセルの探索を行う。

 さらに今回の捜索ではドローン(無人有翼機)も投入する。

「無人機を使ってカプセルの着地予想エリアを上空からすき間なく連続撮影します。写した画像にカプセルがあるか、高速で認識処理を行い、特定します」

 ドローンはヘリコプターが飛行できない場合や、方向探索用アンテナやマリンレーダシステムで発見できなかった場合にも威力を発揮するという。

カプセルに「お宝」が入っているかは現地で確認

 そうやって発見したカプセルは現地本部の建屋内に設けられたクリーンルーム内に運ばれ、内部からサンプルコンテナを取り出す。この中からガスを採取し、簡易分析を行う。初代はやぶさではなかった作業だ。

「はやぶさ2が向かったC型小惑星には有機物や水があると想定されました。今回のカプセルにはこれらの揮発成分を閉じ込める工夫がされています」(津田雄一マネジャー)

 有機物や水の成分を分析することで原始太陽系の姿だけでなく、地球の海や生命の誕生の起源に迫れると期待される。

 サンプルは清浄度を維持したまま神奈川県相模原市にある宇宙科学研究所に輸送し、詳しい解析作業を行う予定だ。
「カプセル探索に要する時間にもよりますが、日本に100時間以内に届けることを目標にしています」(中澤さん)

 JAXAは、はやぶさ2の地球帰還とカプセル回収の様子をできるかぎりリアルタイムで情報を発信していく計画だ(※)。

「残念ながら、新型コロナの問題がありますので、『現地に見に来てください』という状況にはありません。ですが、世界中のみなさんにはやぶさ2が帰ってくるところを見ていただきたい。新型コロナの制約のなか、どのような情報発信ができるのか、見守っていただきたいと思います」(津田さん)

                         (文・米倉昭仁)

※地球帰還の最新情報は「JAXAはやぶさ2プロジェクト」のホームページで。
https://www.hayabusa2.jaxa.jp/