そこで同年6月、内閣官房新型コロナウイルス感染症対策推進室の依頼にもとづき、マンション計画修繕施工協会がマンション関係団体とともに、「マンション計画修繕工事における新型コロナウイルス対策ガイドライン」を医療従事者の監修のもとに作成し、公表しました。 

 このガイドラインでは、マンション修繕工事現場における感染リスクをフロー図で示しています(図表A)。このフローでは現場管理における基本方針を、作業員の入退場を管理することと、現場(作業)動線と居住者動線を明確に分離することとしています。 

 作業員は作業場所までの経路以外の立ち入りを制限することで、万が一発症者が出た場合でも、濃厚接触者や消毒の範囲を限定できます。また、工事の多くが外壁や屋根であることから、作業中のソーシャルディスタンス(各人が距離をとること)や換気という点でも、感染リスクは少ないといえます。 

 特に夏場などの外部作業時にソーシャルディスタンスが取れる場合には、作業員の熱中症予防の観点から、マスクの不着用の理解を管理組合に得ることなども明記しています。 

■請負契約を結ぶ際には管理組合内の理解を得る 

 ただ、現場動線と居住者動線が重複する設備工事での専有部立ち入り作業や、開放廊下、エレベーターの使用については、作業効率や工事費にも影響を及ぼすので、契約する前にどのような感染対策をするのか、またどのようにしてほしいのかを施工者と綿密に打ち合わせることが必要です。 

 特に20年4月1日の民法改正に伴い、一般的に使われている民間連合協定の「マンション修繕工事請負契約約款」も改正されました。これまでの「瑕疵担保責任」という文言が「契約不適合責任」に変わったこともあり、契約の内容を明確にして双方が理解しておくことが必要になっています。 

 感染症対策というのは個人個人で受け取り方が違うため、工事の請負契約を結ぶ際には管理組合内の理解を得ておくことも必要です。 

(文/飯田太郎、監修/マンション計画修繕施工協会) 

※週刊朝日MOOK「資産価値を守る!マンション管理・修繕・建替え大全2021」から