高校時代の斎藤佑樹 (c)朝日新聞社
高校時代の斎藤佑樹 (c)朝日新聞社

 11月14日、楽天は2017年のドラフト1位で入団した近藤弘樹と来季の選手契約を結ばないことを発表した。統一ドラフトとなった2008年以降の1位指名選手で、3年で戦力外となったのは北方悠誠(唐津商→2011年横浜1位)、野村亮介(三菱日立パワーシステムズ横浜→2014年中日1位)、竹下真吾(ヤマハ→2014年ヤクルト1位)に次いで4人目であり、非常に珍しいことと言えるだろう。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 その一方で来季もチーム残留が濃厚ながら岐路に立たされているかつてのドラフト1位選手も存在している。その代表格が斎藤佑樹(日本ハム)と言えるだろう。プロ入り10年目の今シーズンは開幕当初から調子が上がらず、プロ入り後初となる一軍登板ゼロに終わった。二軍での成績も19試合に登板して1勝3敗、防御率9.31という散々たるものであり、オフには右肘の「PRP(自己多血小板血しょう注入)療法」を受ける予定と言われている。32歳という年齢を考えると、来シーズンがラストチャンスになる可能性は極めて高いだろう。

 斎藤の低迷を考えた時に、必ず話題になるのが故障とフォームについてだ。特によく聞かれるのが高校時代のフォームとボールが最も良かったのでは?というものである。筆者も斎藤のピッチングは高校2年春から見続けているが、この意見には概ね同意である。しかしより正確に言うのであれば、ストレートについては高校3年夏の甲子園が最も良かったというべきだろう。

 正直夏の甲子園が始まるまでは高校生レベルの好投手という印象で、ドラフト候補という目では見ていなかった。ところが2回戦で大阪桐蔭を力でねじ伏せたあたりから試合を重ねるごとにフォームの躍動感とボールの勢いが増していき、決勝戦では147キロもマークしている。後に高校、大学のチームメイトからも、当時のストレートが一番速かったと指摘され、苦笑いをしている斎藤の映像もテレビでは放映されている。スピードガンの数字だけであれば、大学4年秋にマークした150キロが最速だが、高校3年夏の甲子園で投げていたボールと比べると明らかに勢いが感じられなかった。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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