夏に炎天下でスポーツをしていると、足がつることが多くなりますが、これは発汗による脱水と電解質の不足が起きているサインといえます。さらに進行すると熱中症となり、足だけでなく全身のけいれんがおこることもありますので、注意しましょう。

 腓腹筋のけいれんの痛みは、一般にかなり激しいものですが、それは一過性の症状です。つったからと言って、筋肉が断裂するわけではありませんし、後遺症が残るわけでもありません。けいれんが治まれば、そのまま運動を続行できます。

 腓腹筋けいれんが起きた場合の対処法としては、とにかく収縮した筋肉を伸展させることです。つま先を曲げて手前に引き寄せたり、立ったまま足を前後に広げてアキレス腱を伸ばすようにしたりして、縮こまっている腓腹筋を伸ばして10秒以上キープし、けいれんが治まるのを待ちます。筋肉の冷えや血液供給の低下があると、とくにつりやすくなるため、局所を温めたり血流をよくするためのマッサージをしたりして筋肉を和らげると効果的です。

 予防のためには、運動前にはストレッチや準備運動をすることです。日ごろ使っていない筋肉ほど筋肉疲労が起こりやすく、けいれんのリスクが高くなるため、念入りにストレッチをしたほうがよいでしょう。そして運動中には適宜休息を取ることと、水分補給・電解質補給をしっかりとおこなうことが大切です。また食事管理の面では、普段から栄養バランスの良い食事と十分な水分の摂取をこころがけましょう。

 また、腓腹筋のけいれんは運動と関わりのない安静時にも起こります。就寝中によく足がつるために、睡眠障害となることもあります。とくに中高年になると、睡眠中によく腓腹筋のけいれんが起きて悩んでいる人の割合が増加します。

 睡眠時は、意外に汗をたくさんかくため、脱水傾向になりやすいといえます。さらに、からだをほとんど動かさないため、心拍数も減り血行が悪くなっています。そのため、睡眠中はふとした拍子に筋肉がけいれんしやすくなります。中高年以降は筋肉量が少なく血流が低下することから、若い人よりもよく足がつるのです。対策としては、運動により起こる場合と基本的には同じです。ストレッチやマッサージ、ミネラルの入った水分の補給などを積極的におこないましょう。

 以上、腓腹筋けいれんが誰にでも起こるものであることをお話ししてきました。通常、腓腹筋けいれんは、命に関わるものではありません。しかし、なかには腎不全や糖尿病、肝硬変、甲状腺機能低下など、何かしらの基礎疾患を原因として発症したり、病気が隠れていたりするケースもあるため、注意してください。

 何度も繰り返すときや、手足のしびれや歩行しづらさ、足のむくみなど、病気を疑わせる症状があるときには、早めに医療機関を受診しましょう。

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松本秀男

松本秀男

松本秀男(まつもとひでお)/医師。専門はスポーツ医学。1954年生まれ。東京都出身。1978年、慶応義塾大学医学部卒。2009年から2019年3月まで、慶応義塾大学スポーツ医学総合センター診療部長、教授。トップアスリートも含め多くのアスリートたちの選手生命を救ってきた。日本臨床スポーツ医学会理事長、日本スポーツ医学財団理事長。

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