中日の8年ぶりAクラスの原動力となった大野雄大 (c)朝日新聞社
中日の8年ぶりAクラスの原動力となった大野雄大 (c)朝日新聞社

 実に2012年以来、8年ぶりとなるAクラス入りを決めた中日。投手では10完投、6完封という現代野球では驚異的な数字を残したエースの大野雄大、野手では最多安打が決定的となっている大島洋平と初の打率3割が濃厚な高橋周平が長いトンネルから脱出する原動力となった。

 しかしトータルの成績を見てみると、意外な事実も見えてくる。チーム防御率、チーム打率はいずれも昨年より悪く、得失点差も昨年の+19から今年は-60と大幅に悪化しているのだ。ちなみにこの得失点差はパ・リーグ最下位のオリックスと同じ数字であり、セ・リーグでもヤクルトに次いでワースト2位となっている。そんな数字でもなぜ3位に躍進することができたのか。その要因を探ってみた。

 まず最も大きな要因と考えられるのが接戦の強さである。昨年の1点差ゲームの勝敗は19勝27敗と負け越していたが、今年は12勝5敗と大きく勝ち越している。そしてそれを支えたのが強力なリリーフ投手陣だ。開幕当初はなかなか勝ちパターンを確立することができなかったが、7月に入って抑えのR.マルティネスを固定して一気に安定感が増した。シーズン終盤に体幹のコンディション不良で戦列を離れるまでは40試合に登板して2勝0敗7ホールド21セーブ、防御率1.13という抜群の成績を残している。今年で24歳とまだまだ若く、体調さえ万全なら来年以降も絶対的なクローザーとして期待できるだろう。

 そして抑えに繋ぐまでのセットアッパーとしてフル回転し、ともに最優秀中継ぎ投手のタイトルを獲得した祖父江大輔、福敬登の存在も非常に大きかった。祖父江は54試合、50回1/3を投げて与四死球わずか7という抜群の制球力でWHIP(1回あたりに出塁を許した走者の数)はリリーフ投手として超一流と言われる1.00を下回る数字を残している。昨年の契約更改では厳しい査定に同情する声も多かったが、今年は文句なしの成績だっただけに大幅な昇給も期待できそうだ。

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西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

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