以上の他に、青潮説もありますが、炭化水素が青潮で発生するのかは疑問です。

■    実は身の回りにある化学物質

 神奈川県は、上述の炭化水素は毒性が低く、濃度も低いことなどから、ただちに健康に影響を及ぼすレベルではないとしています。これらの物質はどこにあるのかと関心を呼び、ニュースサイトのコメント欄などでは、「原因がわからないというのは怖い」「臭いの元が人工のものか、地中からのものか」「人工的な異臭なら、早く調査して解決してほしい」などと書き込まれています。いずれにせよ原因物質と発生源の特定がまずは急務ですので、さらなる分析結果を待ちましょう。

 今回の異臭騒ぎ、普通に生活をしていますと炭化水素と言われてもピンときません。ですが、私たちの生活は化学物質や化学製品に囲まれています。メタンガス、プロパンガス、ブタンガス、ガソリンと言えば日常用語、これらはすべて炭化水素類で化学そのものです。

 最後に、レギュラーガソリンとハイオクガソリンの違いは何でしょうか。ハイオクの意味は、オクタン価が高いと言う意味です。オクタン(Octane)は炭素数が8つの炭化水素です。蛸・オクトパス(Octopus)の足は8本で、お互いの命名に関係があります。オクタン価については稿を改めたいと思います。

<プロフィール>
和田眞(わだ・まこと)/1946年生まれ。徳島大学名誉教授。理学博士(東京工業大学)。徳島大学大学院教授や同大学理事・副学長(教育担当)を務めた。専門は有機化学。現在、雑誌やWebメディアに「身の回りの化学」を題材に執筆している