4.欠氷(かきごおり)


~欠けた氷を食べる習慣があった

 「雪掻き」と書くので、「掻氷」と思われがちですが、正しくは「欠」の字を用います。もともとは氷を氷室(ひむろ)で保存し、欠けたものを食べたので、「欠氷」という言葉が生まれたといわれています。氷を削って食べる習慣も古くからあり、『枕草子』には「削り氷(けつりひ)」という言葉が登場します。

5.雑炊
~ご飯に水を足したので「増水」と書いた

 もともとは、ご飯に水を足して量を増やしたものを「ぞうすい」といい、漢字では「増水」と書きました。次第に、野菜や魚介類など、雑多な具材を加えて醤油や味噌で味付けするようになり、「雑炊」の字が当てられたといわれています。なお、「おじや」は雑炊と同じもので、煮るときの「じやじや」という音に「お」をつけた女房詞(にょうぼうことば)だといいます。「おかゆ」は、米を炊くときの水の量を増やして軟らかくしたものです。

6.灰汁(あく)
~もともとは漢字の通り灰を水に溶かした汁

 本来は漢字の通り、灰を水に溶かして上澄みをすくった汁のことで、古くから洗濯や染色に用いられてきました。また、料理で苦みやえぐみ、渋みなどを取り除くのにもこの灰汁が使われました。そこから、次第に苦みやえぐみ、渋みなどを総称して灰汁というようになったといわれています。「あく」の語源は、「飽きる」の「飽く」や、「あくどい」の「あく」などとする説があります。

7.御手洗団子(みたらしだんご)
~御手洗川の神事で売られたのがはじまり

 京都・下鴨神社の御手洗川(みたらしがわ)で行われる「御手洗会(みたらしえ)」の際に売られたことがはじまりの団子なので、「御手洗」の名がついたといわれています。御手洗会は、参拝者が御手洗川に足をつけて無病息災を祈る神事です。団子は、御手洗川の源の御手洗池(みたらしのいけ)に湧きあがる水泡をかたどったもので、本来は五つを連ねて五体を表すのだといいます。また、当初は米粉の団子を串にさして醤油で付け焼きにしていましたが、今では醤油あんがかかった団子を全般的に御手洗団子とよんでいます。

※漢字エンタメ誌「みんなの漢字」2019年7月号から抜粋
監修/久保裕之(立命館大学白川静記念東洋文字文化研究所)