あの団子が川に入って無病息災を願う神事から名付けられとは意外!(イラスト/桔川伸)
あの団子が川に入って無病息災を願う神事から名付けられとは意外!(イラスト/桔川伸)

 ふだん目にする飲食物の漢字で、「なぜこの漢字が使われているのだろう」と思うものはないでしょうか。また、由来を調べると「もともとは違う読み方だった」というものがあります。今回は、そんな飲食物の漢字うんちくを紹介します。

*   *   *
1.烏龍茶
~茶葉の色が黒く龍のようにねじれている

 由来は中国語ですが、なぜ「烏(からす)」と「龍」の字が用いられているのでしょうか。それは、茶葉の状態が関係しています。烏龍茶の茶葉は烏のように黒く、龍の姿のようにねじれていることから、この漢字を組み合わせているのです。また、中国で「龍」は皇帝を指すので、「黒い皇帝のお茶」という意味もあるのだといいます。というのも、烏龍茶は中国の明の時代に最高のお茶を皇帝に献上しようとつくり方の工夫を重ねて生まれたお茶だからです。

2.杏仁豆腐
~キョウニンドウフも間違いではない

 ここでの「仁」は種子のことで、「杏仁」とは杏子(あんず)の種子のことです。この杏仁からつくった油を「杏仁油(きょうにんゆ)」、杏仁と水からなる漢方薬を「杏仁水(きょうにんすい)」、さらには飛鳥時代の仏像にみられる杏仁と似た目の形を「杏仁形(きょうにんぎょう)」といいます。同様に、「杏仁豆腐」ももともとは「きょうにんどうふ」でしたが、いつしか「あんにんどうふ」が広まり、定着したのです。中国語の中でも「あんにんどうふ」の発音に近い上海語が由来という説もあります。

3.桜桃(おうとう)
~「桃」はかつて果物の総称だった

 サクランボを桜桃と表しますが、なぜ「桃」の字が使われているのでしょうか。実は、古くから桃は邪気を払う力があると重宝され、果物の総称でもあったのです。そのため、アーモンドを「扁桃(へんとう)」、アンズを「唐桃(からもも)」、スモモを「酸桃」と表すように、さまざまな果実に桃の字が用いられています。一般的に食べられているサクランボはセイヨウミザクラの実なので、桜類の果実という意味で桜桃の字が用いられたのです。

次のページ
「雑炊」は昔は「増水」だった!?