青森山田から浦和レッズに入団した武田英寿 (c)朝日新聞社
青森山田から浦和レッズに入団した武田英寿 (c)朝日新聞社

 浦和レッズの若手育成について語りたい。近年、チーム成績で川崎フロンターレに敵わず、営業収益ではヴィッセル神戸に抜かれたが、観客動員数では2006年から昨季まで14年連続でJリーグ最多を記録。浦和レッズが、日本で最も熱いサポーターに支えられたビッグクラブであることに疑いの余地はない。今季は15節終了時点で7位とまずまずの順位につけているが、依然として世代交代は大きな課題であり、それを推進させる看板選手の育成が求められる。

 かつての浦和には、多くの生え抜きの選手がチームの中心にいた。山田暢久、小野伸二、鈴木啓太、長谷部誠、細貝萌……。彼らに共通するのがJユースではなく高体連の出身者であり、高校を卒業すると同時に赤いユニフォームに袖を通したということである。しかし、浦和というクラブが巨大化に突き進んだ過程で「育成」よりも「補強」が重要視され、若手の台頭は困難になった。

 その中で注目されたのがユース出身者であり、2008年の高円宮杯で優勝(決勝戦を9対1で勝利)したレッズユース黄金世代から、山田直輝、高橋峻希、永田拓也、原口元気らが次々とトップ昇格。その流れは現在も続き、今季は関根貴大、橋岡大樹のユース出身者がスタメンを張り、規格外のGK鈴木彩艶も控えている。そしてその一方で、柴戸海、汰木康也と大学や他クラブを経由した若手はいるが、高体連出身者の生え抜き選手はメンバーリストに入っていない。

 そもそも高体連からの新人獲得事例が少なかった。細貝(同期入団に赤星貴文、近藤徹志がいる)より後の入団選手を見ると、名門・市立船橋高の主将として総体優勝に貢献したDF橋本真人、盛岡商高2年時に3得点を決めて全国制覇に貢献した林勇介、前橋育英高の心臓として活躍してプラチナ世代の一員としてU-17W杯でも印象的なプレーを披露したMF小島秀仁、作陽高のファンタジスタとして浦和5年ぶりの高卒新人として注目された伊藤涼太郎がいる。

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青森山田の2人は超高校級の逸材