■埼玉県屈指の女子進学校

職員室前で先生に質問をしている生徒たち。入り口脇には大きな黒板が設置されている(写真:同校提供)
職員室前で先生に質問をしている生徒たち。入り口脇には大きな黒板が設置されている(写真:同校提供)

 竹は節ひとつひとつに成長点を持ち、その節を利用してぐんぐん急成長するらしい。

 大学を卒業して社会に羽ばたくとき、昇進して部下をはじめて率いるとき、結婚を決めるとき、子を授かったとき……。わたしたちは人生でさまざまな「節目」を迎える。それらは自身の新たな成長期への入り口であるとともに、一抹の不安や戸惑いを抱きやすいタイミングでもある。そんなとき、人は過去の「節目」を振り返り、自身の「軸」を確かめたくなる。

 さいたま市緑区東浦和にある中高一貫校「浦和明の星女子」。この中高一貫校の卒業生たちは、ことあるごとに青春を過ごした学び舎に立ち寄る。彼女たちはそれを校名にちなんで「帰星(きせい)」と呼ぶ。いつ誰が使い始めたことばなのかは判然としないが、卒業生同士が連絡を取り合うとき、「そろそろ帰星しようよ」という具合に、ごく自然に口にするという。

 同校は、埼玉県屈指の女子進学校である。桜蔭・女子学院をはじめとした難関校を2月に受験する女子優秀層が、その前哨戦として1月におこなわれる同校の中学入試に挑むケースが多い。入試日程の関係上、同校を第1志望にする子は少ないと言われている。

■第1志望者は少ないけれど

 それでは、同校を第1志望にして入学した生徒は全体の何割くらいなのだろうか。

「生徒たちに話を聞くと、多くは『明の星だったら通いたい』と考えて受験していたようですが、アンケートを取っているわけではないので、数値としては正直分かりません」

 同校の広報部部長を務める高野栄治先生からはこのような回答を得たが、模擬試験のデータや各進学塾関係者の話などから総合すると、同校を第1志望校として入学した生徒は1学年4クラス(1学年約160人)のうち1クラスの人数(約40人)に届くか届かないかくらいではないか。わたしはそう睨んでいる。

 にもかかわらず、先述のように同校の卒業生たちはこの学び舎を人生の「よりどころ」にし、たびたび「帰星」している。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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