■女子中高生がぐんと成長する瞬間
高野先生によると、生徒たちが自立への第一歩を踏み出す「成長タイミング」があるという。
「それは『自信』を持ったときです。わたしはテニス部の顧問ですが、試合に一度勝ったことで途端に練習姿勢が変わることがあります。あるいは、委員会活動などで役職に就いて、ある物事を苦労して成し遂げたときなど……。そんな成功体験があったときに子どもたちはぐんと成長します」
前出の卒業生も、こう話す。
「とにかく他人に頼らず自分自身でものを考えようという機会が多くありました。文化祭をはじめ、学校側がレールを敷くようなことはしませんね。『あなたたちが考えてよいと思うものをやってみろ』と。先生たちはそれをちゃんと見守ってくれるのです」
■卒業生にも配慮した学び舎づくり
同校の先生や卒業生の話に耳を傾けていると「生徒」と「教員」が強い信頼関係を結んでいることが分かる。
それを象徴しているのが同校の職員室。その入り口脇にはとても大きなサイズの黒板がある。コロナ禍の今年は「密」にならないよう配慮しているというが、例年は多くの生徒たちが先生方を訪ねて、学習指導やさまざまな相談を受けている光景が見られるという。また、校内のいたるところが吹き抜けの構造になっていて、開放感とともに、常に先生方から見守られているという雰囲気が伝わってくる。
「個」を尊重する校風、教員との距離の近さ……。そんな6年間を過ごした生徒たちは、たとえ第1志望ではなかったとしても、いつしか母校愛が醸成されていくのだろう。彼女たちは卒業後もたびたび「帰星」するようになる。
高野先生は嬉しそうに言う。
「卒業生たちは年がら年中やってきますね。小さなお子さんを連れて来る卒業生も多いですよ。大学を卒業したとき、結婚したときなどの大きな節目のとき……。何か悩みがあって訪問する場合もあるのかもしれませんね。学校を訪れてすっきりした顔で帰っていく子もいます。ここは私学ですから異動もない。中高時代に教わった教員が変わらずいることが多いのです」
高野先生によれば、同校は校舎の建て替え工事をおこなったときにも、こんな配慮をしたという。
「工事をするときに大事にしたのは、前の校舎の趣をちゃんと残すこと。いろいろなものの配置もできるだけ変えないようにしています。ホールの位置もそのまま。噴水は位置こそ変わっていますが、同じ形で置いてあります。外壁だって似たような感じに仕上げています。卒業生たちが訪れたときに懐かしく当時を思い出してほしいのです」