27年にわたり中学受験指導を行っているベテラン塾講師・矢野耕平さんが、実際にかかわった受験生の実例や、自身で足を運んで取材した私立中高の様子をもとに、中学受験や学校選びのヒントをつづります。受験するなら知っておきたい、私立中学と中学受験の「リアル」とは――。

MENU ■塾通いを検討している保護者からよく質問されること ■中学受験の勉強は早期化している ■都心では低学年で満席になる塾もある

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■塾通いを検討している保護者からよく質問されること

 毎年、11月に入ると、わたしの塾には連日のようにお問い合わせの連絡が入る。わたしの経営する塾もそうだが、中学受験塾の新学年としてのスタートは2月になる。しかし、その直前の時期である秋から冬にかけて「助走期間(お試し期間)」を設けたいとお考えの保護者が多いのだろう。

 わたしがお問い合わせでいらっしゃった保護者と面談をする際に最も聞かれるのは、次の類いの質問だ。

「何年生からの塾通いがよいのでしょうか?」

「低学年から始めないと中学受験には間に合わないのですか?」

 この手の質問への回答は実に難しい。正直に申し上げると「わかりません」となる。

 なぜなら、子どもの置かれた状況や、それまで学習してきた背景、家庭環境などは千差万別であり、一律に「この時期から始めたほうがよい」という正解などないからだ。

 塾の多くは、小学5~6年生の2年間で中学受験に必要なカリキュラムが網羅されているため、カリキュラム上のこと「だけ」を考えると、中学受験勉強のスタートは小学5年生からでギリギリ間に合うことになる。しかし、小学5年生からの学習ペースはかなり速く、学習の質量ともにハードなものになるのが一般的だ。だからこそ、中学受験勉強を円滑に進めるための基礎的な姿勢を身につけようとし、小学3年生あるいは小学4年生から塾通いを始める家庭が多い。

 なお、先日筆者が自身のTwitterを活用して「いつから塾通いを始めたか?」というアンケートを試みたところ、最も多かったのは「小学4年生」という回答だった。

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矢野耕平
矢野耕平

矢野耕平(やの・こうへい)/中学受験専門塾スタジオキャンパス代表・国語専科 博耕房代表。1973年生まれ。著書に『令和の中学受験 保護者のための参考書』(講談社+α新書)、『中学受験で子どもを伸ばす親ダメにする親』(ダイヤモンド社)、『13歳からのことば事典』(メイツ出版)、『女子御三家 桜蔭・女子学院・雙葉の秘密』『男子御三家 麻布・開成・武蔵の真実』(ともに文春新書)、『LINEで子どもがバカになる「日本語」大崩壊』(講談社+α新書)、『旧名門校 VS 新名門校』(SB新書/SBクリエイティブ)、『早慶MARCHに入る中学高校』(朝日新書)など多数。

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