11の医学団体で構成されているThe Medical Society Consortium on Climate & Healthは、気候変動による猛暑の増加によって既に人々の健康が害されていることを指摘しています。猛暑は、特に屋外労働者やエアコン装置のない人、学校の運動部員や選手などが最も健康を害しやすい、つまり熱中症になりやすいことを指摘しています。

 本来、春から夏にかけて次第に暑さにからだを慣らしていくことで、私たちは暑さに対応することができます。夏になると、たくさん汗をかくようになりますが、これは熱中症予防には欠かせません。気温の上昇につれて汗の量が増えることで、体内の熱をからだの外に逃がして体温の上昇を防ぐことができるのです。発汗の他に、血液量の増加や心拍数の減少、汗に含まれる塩分濃度の低下などが、暑さに対する慣れとして現れてくるからだの反応であり、こうしたからだの変化は、「暑熱順化」と呼ばれています。

 しかしながら、今年は新型コロナウイルスの流行に伴い、春から外出を控える状況が続いています。涼しい日も多かった梅雨が明け、いきなり夏本番の真夏日を迎えた今、「ちょっと外出しただけなのに、身体がついていかない。」という方も多いのではないでしょうか。

 総務省消防庁の「熱中症による救急搬送者数に関するデータ」を用いて2019年の梅雨明け前後の1週間(梅雨明け前の1週間は2019年7月17日から7月23日、梅雨明け後の1週間は2019年7月24日から7月30日)での救急搬送者数を比較した日本気象協会の「熱中症ゼロへ」プロジェクトによると、救急搬送者数は関東甲信地方では約4.4倍、東海地方では約4.3倍、近畿地方では約3.4倍と、梅雨明け前に比べて梅雨明け後の搬送者数が格段に増えていることがわかったと言います。

 外出自粛による運動不足、体力低下、外出時のマスク着用、そして暑さへの適応不足の中での、梅雨明け後のこの急激な気温の上昇は、身体への負担は大きいと言わざるを得ません。

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コロナで例年以上の熱中症対策を