この規格外の「ザイオン」と双璧をなすのが、小久保玲央ブライアン(ベンフィカ)だ。2001年1月23日生まれの19歳。ナイジェリア人の父と日本人の母の間に生まれ、身長193センチを誇る。小学生までFWでプレーしていたこともあって足元の技術も高い。中学でGKに転向し、柏レイソルU-15から同U-18でプレーし、2018年にカタールで開催されたユース年代を対象としたアルカス国際カップで大会ベストGKに選出されると、そこで対戦したポルトガルの名門チームからオファーを受け、2019年1月に海を渡った。当初はU-23チームに所属していたが、5月からはトップチームに本格合流。身体能力の高さに加え、優れた環境が整っているだけに今後の成長が楽しみでならない。

 その他にも、大迫同様に昨年のコパ・アメリカで代表入りした早稲田大出身の23歳・小島亨介(アルビレックス新潟)に、流通経済大から横浜F・マリノスに入団した22歳のオビ・パウエル・オビンナ(栃木SCに育成型期限付き移籍)、フランス人の父を持ちスペインでプレーする22歳・山口瑠伊(エストレマドゥーラ)の東京五輪世代。さらに将来ガンバ大阪の正GKを担うことを期待される19歳・谷晃生(湘南ベルマーレにレンタル移籍)、今季Jデビューした18歳・小畑裕馬(ベガルタ仙台)と、次々と将来有望な若手GKが頭角を現わしつつある。今後、彼らが切磋琢磨しながら期待通りに成長できれば、日本が「GK大国」と呼ばれる日が来るかも知れない。少なくとも、外国人GKが数多くゴールマウスを守っている現在のJリーグのゴール前の景色は大きく変わるはずだ。

 日本サッカー史上最大の番狂わせである「マイアミの奇跡」における最大の立役者はGKの川口能活だった。欧州列強の国々を見ても、スペイン代表の黄金期にはイケル・カシージャスが好セーブを連発し、ドイツ代表の2014年W杯優勝時にはマヌエル・ノイアーが暴れ回り、2018年のW杯で優勝したフランス代表には主将としてチームを引っ張ったウーゴ・ロリスがいた。日本に世界基準のGKが育ち、「GK大国」となった時、日本代表が再び奇跡を起こし、W杯を制するチャンスが生まれることになるのかも知れない。その日を、心待ちにしたい。