※写真はイメージです(写真/Getty Images)
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日本大学松戸歯学部付属病院「いびき外来」外来長の鈴木浩司歯科医師
日本大学松戸歯学部付属病院「いびき外来」外来長の鈴木浩司歯科医師

 いびきは多くの人に見られる症状だが、医者にかかるほど気にする人は少ない。しかし、いびきをかいているということは、眠っている間に何度も呼吸が止まる病気「睡眠時無呼吸症」の疑いがある。睡眠時無呼吸症になると、高血圧症から心筋梗塞や脳梗塞などの命に関わる病気を引き起こすことがある。今回は脳梗塞になった患者の治療にあたった、日本大学松戸歯学部付属病院「いびき外来」の鈴木浩司歯科医師に話を聞いた。

【写真】鈴木浩司歯科医師

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 千葉県の高岡隆さん(仮名・62歳)は、脳梗塞を起こして県内の救急病院に運ばれた。一命をとりとめたものの、血圧は依然として高いままだった。治療をおこなうなかで睡眠検査を実施したところ睡眠時無呼吸症と診断されたため、日本大学松戸歯学部付属病院のいびき外来を紹介されて、鈴木歯科医師のもとを訪れた。鈴木歯科医師はこう説明する。

「いびきは一般的に、舌が喉の奥に沈下し、気道が狭まることで起こります。さらに舌根(ぜっこん)部が沈むと気道は完全に塞がり、呼吸停止に陥ります。この呼吸停止が寝ている間に何度も発生するのが、睡眠時無呼吸症です」

 睡眠時無呼吸症は日中に強い眠気を引き起こすことで知られているが、ほかにもさまざまなリスクを抱えているのだという。

「眠っている間に呼吸が止まると、心臓がからだに酸素を送るために激しく動き続けます。すると、心拍数が跳ね上がり血圧も急激に上昇するので、心臓や血管に大きな負担がかかります。それが毎日眠っている間に起きているわけですから、高岡さんのように高血圧症から脳梗塞や心筋梗塞などの循環器の病を引き起こす可能性は非常に高くなります」

 睡眠時無呼吸症の診断をする際には、睡眠1時間あたりの無呼吸および呼吸低下の回数(AHI)が指標になる。AHIが5以上15未満だと軽症、15以上30未満が中等症、30以上だと重症となる。高岡さんのAHIは18で、睡眠時無呼吸症の中等症だった。

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睡眠時無呼吸症は何科で診察してもらう?