高校でも「松坂さんが乗り移るくらいのイメージ」で、ワインドアップからゆっくり動作に入り、鋭く腕を振る松坂流のフォームで、150キロ台の速球を繰り出す本格派右腕に成長。甲子園デビューとなった16年のセンバツ1回戦、東海大甲府戦では、YouTubeで98年夏の横浜vsPL学園の動画を毎日見て、“師匠”の投球をチェック。最速149キロをマークし、7安打6奪三振1失点で甲子園初勝利を挙げた。

 同年夏にも甲子園に連続出場し、ドラフト5位で巨人に入団。18年にイースタンで11勝2敗、防御率2.69の好成績を挙げ、最多勝、最優秀防御率、最高勝率の三冠に輝いたが、その後、1軍で結果を出せないまま、今年7月、高梨雄平との交換トレードで楽天へ。松坂スタイルのフォームから脱皮し、新天地で1軍初勝利を目指す。

 フォームばかりか顔つきも似ていることから、現在ヤンキースでプレーする“田中将大の再来”と言われているのが、昨夏準優勝の星稜のエース・奥川恭伸(現ヤクルト)だ。

 楽天監督時代に田中を見てきた野村克也氏も、甲子園大会期間中の昨年8月に「腕の振り、投げ方がマー君そっくり。伸びしろがある。間違いなく活躍する。どこも欲しいんじゃないの」と絶賛したほど。

 183センチ、82キロの体格も、高校時代の田中(185センチ、83キロ)とほぼ同じで、甲子園での最速154キロは、田中の150キロを上回る。

 投球フォームは、左足の使い方などが前田健太(ツインズ)に似ているが、直球の質や変化球の精度に加え、エースとしての自覚や好不調の波が少ないなどの投球スタイルは、田中を彷彿とさせる。また、ピンチを切り抜けた直後、マウンドで雄叫びを上げる姿も、田中とダブって見える。

 奥川自身も、小学生だった13年の日本シリーズで楽天時代の田中が胴上げ投手になったシーンを見て以来、「そういうことができる選手はカッコいいし、憧れです。全部のボールが一級品。24戦して負けなかったり、エースらしい存在」と目標にしつづけてきた。

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吉田輝星が思い出させる“あの投手”