強い意思は心に刻みつけて消えないように(イラスト/桔川伸)
強い意思は心に刻みつけて消えないように(イラスト/桔川伸)

 同音異義語だったり、意味から連想しにくい文字が用いられていたり、漢字の表現を間違う原因はさまざまです。それらは、漢字の意味をひもとくことで「なるほど!」となるものが少なくありません。そんな漢字うんちくを紹介します。

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1.見栄を張る
~ 「切る」のは歌舞伎のポーズの「見得」

 「見栄」と「見得」を混同しがちです。「見得」は歌舞伎のにらむようなポーズのことで、自分を誇示するように大げさな態度をとることを「見得を切る」といいます。自分をよりよく見せようと外見を飾ることを表すときは「見栄」を用いて「見栄を張る」といいます。「見得」も「見栄」も、「見えるさま」という意味の「見え」の当て字ですが、どちらの漢字を使うかで意味が分かれるのです。

2.笠に着る
~「傘」や「嵩」は着るものでない

 「権威や地位を利用して威張る」などの意味があります。雨や雪、日差しなどを防ぐために頭にかぶる笠を、権力者の庇護や自分の権威に見立てています。「笠」を「傘」や「嵩(かさ)」と間違えるケースがあるようです。ここでの「着る」は「身に着ける」意味なので、手に持つ「傘」ではなく頭にかぶる「笠」だとわかるでしょう。「嵩に着る」としてしまうのは、「優勢に乗じて攻勢に出る」という意味の「嵩にかかる」との混同によるものと考えられます。

3.腹が据わる
~落ち着いて動じない意味の「据わる」

 「物事に動じずに、度胸がある」という意味の言葉です。「座る」でも意味は通じそうですが、正しくは「据わる」です。「据わる」には「落ち着いていて動じない」という意味があるのです。そのため、「腹が据わる」だけでなく「肝が据わる」「赤ん坊の首が据わる」「目が据わる」のように用いられます。

4.一巻の終わり
~「一巻」は「一つの物語」。終わると後戻りできない

 物事の結末がついて、何かしようとしても手遅れなことですが、「一巻」と表記するとまだ続きがありそうで、挽回できそうな気もしてしまいます。しかし、ここでの「一巻」とは「一つの物語」という意味です。物語が終わってしまったので後戻りできないのです。貫き通すという意味の「一貫」を用いたほうが、すべてが終わった感じがするかもしれませんが間違いです。

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「後世」?「後生」?おそるべし