ダルビッシュ有(カブス)、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ツインズ)、菅野智之(巨人)など、ここ数年は絶対的右腕の時代が続いた。しかしここへ来て再び、左腕の波が訪れ始めている。

 代表格であるDeNAは、投手陣に東克樹(立命館大)、石田健大(法政大)、今永昇太(駒澤大)、濱口遥大(神奈川大)など多く左腕が名を連ねる。特筆すべきはその多くが大卒ということだ。

「一般的に18歳は素材の時期で、プロ1年目から結果を出せる高卒投手は特別。まだまだ身体も成長期なので、高卒でプロに入った選手の3年計画というのが現実的プラン。大学や社会人ではその間に身体も作れて、実戦経験も積める。その中でも大卒に特化して即戦力左腕を獲得している、DeNAの明確なビジョンがすごい」

ーーテングにならず地に足をつける。

 高校で結果を残しながら、大学経由でプロ入りし活躍できない投手が多い時期もあった。高卒でプロ入りし鍛えるべき、という声も上がっていた。

「これも時代とともに変わってきた。少子化などで学生獲得が大変な時代。スポーツ設備や指導者などに注力する大学が増えてきた。当然、科学的トレーニングなども学べる。高卒ではなく大学に進学する方が、結果的に成長できるという考えが強くなっている」

 米国でも若年でプロ入りしマイナーリーグで経験を積むのではなく、大学進学する選手が増えているという。大学側もこの機会を逃すまいとプロレベルの設備を整えている。

「左投手は有利だが、最後は自分自身。僕も高校時代は『打たれるわけない』と調子に乗っていた。プロで己の実力を知らされ地に足がついた。これは右も左も、高卒も大卒も変わらない。冷静に生き残る道を見つけることがプロとも言える」

 プロ入りするほどの実力と才能があれば勘違いもしやすい。本当の自分に早く気付くことが1番大事だ、と前田は最後に付け加えてくれた。(文・山岡則夫)

●プロフィール
山岡則夫/1972年島根県出身。千葉大学卒業後、アパレル会社勤務などを経て01年にInnings,Co.を設立、雑誌『Ballpark Time!』を発刊。現在はBallparkレーベルとして様々な書籍、雑誌を企画、編集・製作するほか、多くの雑誌、書籍、ホームページ等に寄稿している。Ballpark Time!公式ページ、facebook(Ballpark Time)に取材日記を不定期更新中。現在の肩書きはスポーツスペクテイター。