高卒1年目からエース級の活躍を見せた楽天時代の田中将大 (c)朝日新聞社
高卒1年目からエース級の活躍を見せた楽天時代の田中将大 (c)朝日新聞社

 7月12日、中日ドラフト1位ルーキー石川昂弥が7番サードで一軍デビューを果たすと、その第一打席でいきなりプロ初安打となるツーベースを放った。その後ヒットが出ない時期が続いたが、徐々に一軍レベルにも対応して結果を残し始めている。その一方、昨年のドラフトで同じ高校生で大きな注目を集めた佐々木朗希(ロッテ)と奥川恭伸(ヤクルト)の二人は二軍で調整、トレーニングの日々が続いている。

【写真】「平成で最もカッコいいバッティングフォーム」はこの選手!

 ロッテ、ヤクルト両チームとも投手陣が万全とはいえない状況だが、二人の将来を考えて大きく育てる方針で、一軍デビューはあってもシーズン終盤というのが現実的だろう。この二人に限らず、ここ数年高校生の特に投手は故障のリスクを考えて慎重に育てるケースが増えてきている。それは将来性を重視して指名した下位指名の選手だけでなく、佐々木や奥川のような目玉クラスの上位指名選手にもその傾向がみられる。果たして高校卒の投手は何年目で抜擢するのが妥当なのか、過去のデータから探ってみたいと思う。

 まず2008年の統一ドラフト以降に入団した高校卒の投手で3年目以内に100イニング以上、もしくは40試合以上登板した投手を調べたところ、以下のような結果となった。

西勇輝(2008年オリックス3位):3年目に130回2/3登板
今村猛(2009年広島1位):2年目に54試合登板
国吉佑樹(2009年横浜育成1位):3年目に112回1/3登板
千賀滉大(2010年ソフトバンク育成4位):3年目に51試合登板
上沢直之(2011年日本ハム6位):3年目に135回1/3登板
釜田佳直(2011年楽天2位):1年目に112回1/3登板
大谷翔平(2012年日本ハム1位):2年目に155回1/3登板
若松駿太(2012年中日7位):3年目に140回登板
藤浪晋太郎(2012年阪神1位):1年目に137回2/3登板
田口麗斗(2013年巨人3位):3年目に162回登板
松井裕樹(2013年楽天1位):1年目に116回登板
二木康太(2013年ロッテ6位):3年目に116回1/3登板
小笠原慎之介(2015年中日1位):2年目に119回登板
アドゥワ誠(2016年広島5位):2年目に53試合登板
堀瑞輝(2016年日本ハム1位):3年目に53試合登板
種市篤暉(2016年ロッテ6位):3年目に116回2/3登板
今井達也(2016年西武1位):3年目に135回1/3登板
梅野雄吾(2016年ヤクルト3位):3年目に68試合登板
山本由伸(2016年オリックス4位):2年目に54試合登板

 ドラフト時点での順位の内訳を見てみると1位が8人と圧倒的に多いが、下位指名と言われる5位以下でも育成枠含めて7人が名を連ねているという結果となった。そしてその下位指名の中から千賀、上沢、種市がエース格となっているのは非常に興味深いところである。

著者プロフィールを見る
西尾典文

西尾典文

西尾典文/1979年生まれ。愛知県出身。筑波大学大学院で野球の動作解析について研究し、在学中から専門誌に寄稿を開始。修了後も主に高校野球、大学野球、社会人野球を中心に年間400試合以上を現場で取材し、AERA dot.、デイリー新潮、FRIDAYデジタル、スポーツナビ、BASEBALL KING、THE DIGEST、REAL SPORTSなどに記事を寄稿中。2017年からはスカイAのドラフト中継でも解説を務めている。ドラフト情報を発信する「プロアマ野球研究所(PABBlab)」でも毎日記事を配信中。

西尾典文の記事一覧はこちら
次のページ
早めの抜擢には“危険性”も?