一方、切除可能境界では、はじめに術前化学療法(あるいは術前化学放射線療法=後述)を実施したあと再評価をして、手術可能なら手術+術後化学療法を、むずかしければ化学療法(化学放射線療法)をおこなう。

 補助療法に用いるエビデンスのあるレジメン(抗がん剤の組み合わせ)は、切除可能に対するものでは術前のゲムシタビンとS-1の併用療法がある。一方、術後ではS-1の単独が最も治療成績がよいことがわかっている。

 局所進行切除不能では、化学療法、あるいは化学放射線療法をおこなう。一次化学療法で推奨されているのは、ゲムシタビン単独、S-1単独、FOLFIRINOX療法(フルオロウラシル、イリノテカン、オキサリプラチン)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルの併用療法。患者の全身状態や希望などを考慮して選ばれる。

 遠隔転移があれば、化学療法を実施する。一次化学療法で推奨されているのは、FOLFIRINOX、mFOLFIRINOX(FOLFIRINOXに改良を加えたもの)、ゲムシタビン+ナブパクリタキセルの併用だ。

■海外で評価高い薬 二次化学療法に

「ガイドラインでは、切除不能に対する二次治療が変わった」

 こう話すのは、膵がんの薬物療法に詳しいがん・感染症センター都立駒込病院院長・消化器内科医の神澤輝実医師だ。

 具体的には、一次化学療法でゲムシタビンに関連するレジメンを用いたときは、FF療法(5-FU+ホリナートカルシウム)とMM-398(血中濃度を維持させるなどの工夫で、効果の持続性などを高めたイリノテカン)の併用療法を、フルオロウラシルの関連するレジメンを用いたときは、ゲムシタビンに関連するレジメンを実施する。

「MM-398は日本では膵がんに対して健康保険が使えません。ただ、この薬は海外でおこなわれた臨床試験では、かなりよい成績が得られています。日本でも近い将来、保険適用になることが期待されています」(神澤医師)

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