帯状疱疹は、軽くすむ人から、発症後何年も痛みに苦しむ人まで、症状の程度に幅がある。電気が走るようなピリピリした痛み、やけどをしたようなヒリヒリした痛み、締め付けられるような痛みなど、痛みの感じ方もそれぞれだ。

    発疹が出て初めて診断・治療ができる

 発疹が出るまでは診断できないため、痛みの症状だけがある期間は、肋間神経痛を疑って整形外科を受診するなど、帯状疱疹だと気づきにくい。

 特に帯状疱疹と間違えやすいのが、単純ヘルペスだ。どちらも水ぶくれと痛みが出るが、単純ヘルペスは口の周りや性器など狭い範囲なのに対して、帯状疱疹の症状は帯状で範囲が広い。

 いずれにしても、水ぶくれを伴う発疹が出たら、できるだけ早く皮膚科を受診したい。帯状疱疹は抗ウイルス薬での治療が主となる。

「抗ウイルス薬は、今暴れているウイルスには効きません。ウイルスが新しくつくられるのを抑える薬です。大火事になってからよりもぼやの段階で消火するほうが被害が少ないのと同様に、帯状疱疹もできるだけ早く抗ウイルス薬でウイルスの増殖を抑えることが重要なのです」(同)

 帯状疱疹で問題となるのが、発疹は治っているにもかかわらず、痛みが残る帯状疱疹後神経痛だ。発症後何年も痛みに悩まされることがあり、衣服がすれたり、冷風に当たったりするだけで痛みを感じる人もいれば、電気が走るような痛み、しびれのある強い痛みを感じる人もいる。

■    痛みを早めにとり長期化を防ぐ

 帯状疱疹に伴う痛みは、「前駆痛」「急性期痛」「帯状疱疹後神経痛」の三つに分類される。発疹が出現する前の痛みを前駆痛、発疹が出てからの痛みを急性期痛、発症後3カ月以上続く痛みを帯状疱疹後神経痛と呼ぶ。前駆痛や急性期痛は、主に神経や皮膚の炎症によるものだが、帯状疱疹後神経痛の痛みは、炎症によって神経が損傷、変性したことによる痛みだ。

 香川県小豆島に住む50歳以上の住民を対象とした調査では、帯状疱疹患者の19・7%が帯状疱疹後神経痛を発症していた。そのうち、80代が32・9%、60代が13・6%だった。順天堂大学順天堂医院麻酔科・ペインクリニックの井関雅子医師はこう話す。

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