例えば、ミルクボーイ、ぺこぱといった昨年末の『M-1グランプリ』で活躍して一気に支持層を広げた芸人たちは、今年に入ってから飛躍的に仕事を増やした。また、すゑひろがりずやニューヨークもそれに続いて知名度を向上させていた。

 また、1月1日放送の『おもしろ荘』で優勝してチャンスをつかんだエイトブリッジも、コロナの影響をもろに受けたコンビである。くりぃむしちゅーの有田哲平の運転手を務めていたという経歴を持つ別府ともひこは、桁外れの天然キャラとして知られている。

 私自身が『ウチのガヤがすみません!』の収録に参加した際にも、共演していた別府がスタジオで人知れずオシッコを漏らしてしまうというハプニングがあり、衝撃を受けた。それ以外でも、とぼけた発言を連発して爆笑を巻き起こしていた。

 エイトブリッジはその後も順調にテレビに出ている。だが、世間的にはブレークしているという印象は薄いのではないか。コロナのせいで「大ブレーク」が「小ブレーク」にとどまり、突き抜けることができていない。これはなかなか気の毒である。

 結局のところ、いわゆる「大ブレーク」という現象は、あくまでもテレビ業界が通常営業をしていることが前提になっている。普通にバラエティ番組が収録され、放送されるというサイクルの中で、立て続けに多くの番組に呼ばれることでその存在が認知され、キャラクターが面白がられ、1つのムーブメントを生み出す。テレビという安定した土壌がないと、芽が出て花を咲かせるのは難しいのである。

 通常、お笑い界でブレーク芸人と呼ばれるためには、1年の後半よりも前半に出てくる方が有利だった。だが、今年に限っては、後半に出てくる方が有利かもしれない。

 ここへ来て、テレビの収録も復活しつつあり、お笑いライブも続々と再開されようとしている。感染リスクに配慮しながら、通常通りの収録や興行を行うことが少しずつ可能になりつつある。『キングオブコント』『女芸人No.1決定戦 THE W』といったお笑いコンテストが例年通り開催されることも発表された。「ウィズコロナ」「アフターコロナ」の混迷の時代に頭一つ抜け出す芸人は現れるのだろうか。(お笑い評論家・ラリー遠田)

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ラリー遠田

ラリー遠田

ラリー遠田(らりー・とおだ)/作家・お笑い評論家。お笑いやテレビに関する評論、執筆、イベント企画などを手掛ける。『イロモンガール』(白泉社)の漫画原作、『教養としての平成お笑い史』(ディスカヴァー携書)、『とんねるずと「めちゃイケ」の終わり<ポスト平成>のテレビバラエティ論』 (イースト新書)など著書多数。近著は『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(光文社新書)。http://owa-writer.com/

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