■弁護士に依頼した場合の「費用対効果」は?

「発信者情報開示請求書」の記入についても、所定の用紙を見れば、

・侵害された権利(著作権侵害、名誉毀損など)
・権利が明らかに侵害されたとする理由(私の著作物を無断で使用された、誹謗中傷されたなど)

を簡潔に書き込み、

 発信者情報の開示を受けるべき正当理由
1.損害賠償請求権の行使に必要であるため
2.謝罪広告等の名誉回復措置の要請のために必要であるため
3.差止請求権の行使のために必要であるため
4.発信者に対する削除要求のために必要であるため
5.その他(具体的に)

に該当するものに○をつけるだけで(複数選択可)、そう難しくはなさそうだ。

 岩崎さんのように、自分が撮った写真や描いたイラストが無断使用された場合は著作権侵害にあたる。実は著作権侵害に対する慰謝料や使用料の請求を行ったとしても、認められる金額はそう多くはないのが現状だ。そのため、岩崎さんは弁護士に依頼せず、自分で発信者情報開示請求を行うようになったが、時と場合によっては弁護士の力を借りるという。

「著作権侵害は費用対効果を考えると弁護士への相談も躊躇しがちですが、名誉毀損などは多額の慰謝料が認められるケースも多いので、弁護士費用も含めた回収に成功する可能性も高いのではないでしょうか?」(岩崎さん)

 自分で「発信者情報開示請求」を行えば、弁護士に依頼しない分、金銭的には抑えられるものの、時間や労力を取られることは確実だ。プロバイダや匿名の加害者が請求に応じない場合は裁判になるため、気苦労も絶えない。「慣れれば自分でできるようになる」と話す岩崎さんも、はじめは手探りで苦労の連続だったという。それでも、一人ひとりがプロバイダや匿名の加害者に対して行動を起こしていかないと、状況を変えることはできないと思ったという。

「開示請求や削除要求などのアクションを取ることで、たとえ開示に成功しなくてもプロバイダや発信者に対する啓発になるはずです。自分で対処できなければ、ネットに強い弁護士などに相談してみてください。開示請求の手続きをする人が増えれば、著作権者や、誹謗中傷を受けた人の保護に向けた法改正などにもつながっていくのではないでしょうか」(岩崎さん)
                        (文・吉川明子)