そのような同調圧力が強い環境下では、個性を発揮できません。会社でも同じです。創造的な仕事を望むのであれば、お互いに「他人のわがままを阻害するようなわがまま」を慎み、まずは人それぞれの「わがまま」を認め合うところから始める必要があります。

■「外回り中のコーヒー代」が出る会社、そのわけは?

 サイボウズでは、「わがままの判断基準は企業理念」と明確に示すことで、いろいろな人がさまざまなわがままを言い出すようになりました。

 たとえば、副業したいというわがままを受け入れて、2012年から社員の副業を全面解禁しました。副業によって、その人のスキルが上がったり人脈が増えたりするのなら、サイボウズにとってもプラスになるのではないかという判断です。

 営業の若手社員から「外出中に喫茶店でかかった費用を経費精算させてほしい」というわがままが出てきたときには、さすがに中堅社員からの反対が少なくありませんでした。

 ただ、彼にもちゃんと言い分がありました。「コーヒーを飲みたいのではなく、仕事をする机と充電する電源が欲しくてコーヒー屋に入っている。だから業務の一環として認めてほしい」という説明です。

 結局、会社がコーヒー代を出すことになりました。このとき、青野はこう説明しました。

「これまで通り、コーヒー代は営業担当者の個人負担でいいというのは、ずっと自分たちがそうしてきた先輩たちの、ある意味、私利私欲ではないでしょうか。『わがまま言うな』というのもわがままです。そんな私利私欲をいったん脇に置き、企業理念の視点から考えてみてください。彼はサイボウズのビジョンに向かってベストを尽くそうと、空き時間を使ってまで頑張ってくれています。コーヒー代で気持ちよく頑張ってくれるなら、安い投資ではないでしょうか」