■副業を始めるコツは?

 副業を始めるためには、どうすればよいのだろう。

「まず、自分のスキルを“棚卸し”することから始めましょう。本業にしっかりと取り組んできた人であれば、必ずそのスキルや業界の知識、人脈を必要とする企業はあるはず。まず自己分析しましょう」

 その次に大切なのが、目標や将来像を明確に持つこと。単なる“お金”目的だとモチベーションが持続せず、本業までおろそかになってしまうケースが珍しくないという。目標のあり方は人それぞれだが、いくつか事例を紹介してもらった。

「大手企業でデザイナーとして働いていたが、育休期間で本業には戻れない。しかし、仕事勘を鈍らせたくないので、副業に挑戦するという人がいました。専門職だと、在宅でオンライン会議も制作もこなせるので、復帰に向けてよいプロセスになっているようです」

 他社のカルチャーに触れ、仕事や人生の幅を広げたいという人も少なくない。

「極端な人の場合、報酬はいらないので会議などに参加させてほしい、という要望もあり驚きました。新卒から同じ企業に勤めている人の場合、今の自分のスキルが違う企業や業界でどれくらい通用するのか試してみたい、という思いもあるようです」

 独立や転職を検討している人たちが副業を始めるケースもある。

「次のステージに挑戦するために必要なスキルや経験を、本業では身につけられないので副業で習得しよう、という目的です。特に独立の場合、現在の勤務先をすぐに辞めるのはリスクを伴うので、副業を起業までの準備期間と位置づけ、新しい人脈を開拓する人もいます」

■個の能力が問われる時代へ

 在宅勤務の浸透や残業時間の短縮、さらには週休3日制を検討する動きも出てきており、会社員の可処分時間はさらに長くなりそうだ。一方で、本業の収入減も予想される。今後、副業は一般化していくのだろうか。

「法整備など制度が不十分な部分はあるものの、解禁企業は増えてきており、先進企業では社内制度を整え副業を後押しする動きも出ています。それと同時に、社員に対する企業の評価は、より厳しいものになるでしょう。一人一人の個の能力や成果が問われる傾向は強まり、副業人材への期待は確実に高まるはずです」

 自分の力はどれくらいか。個として、やりたい仕事はなにか。副業時代に備え、スキルセットや仕事観を改めて考えてみる必要がありそうだ。(文:カスタム出版部)