一方、日本や韓国をはじめとしたアジア圏では、長い歴史の中で、個を確立することよりも、集団の中で期待されている役割を演じること、わかりやすく言えば「みんなに好かれる自分になること」が良しとみなされてきた。結果、集団から攻撃を受ければ、「自分は存在価値がない」と落ち込みやすい。アンチにとっても「自分の発言で対象者を追い込める」という感覚は、欧米よりも強く得られるのだと思います。

――「テラスハウス」は台本のないリアリティー番組をうたっていますが、香山さん自身、テレビ出演の際に「演出」の強要や同調圧力を感じたことはありますか。

香山氏 これまでコメンテーターとして出演した際に、強く発言を指示されたことはありません。

 しかし、たとえば制作側から「これは本当に仮なのですが」といった前置きで遠慮がちに台本を手渡されたり、「視聴者はこういうことを求めています」という説明があったりしたことはありました。

 こちらも出演しているんだからというサービス精神のようなものが働いて、求められることを無意識のうちに演じてしまうことはありました。終わってから制作サイドに「よかったですよ!」などとほめられると、「次も期待される役割を演じよう」とそのキャラクターが強化されます。特に、まだ若くて素直な人だと、「期待に応えなきゃ」「作り手や視聴者を喜ばせ、好かれるようにならなきゃ」という心理は働きやすいでしょう。

 木村さんがそうした番組側の意向に自分でも知らないうちに応えようとした結果、あるキャラクターを作り上げていき、それが攻撃の対象となって今回の悲劇につながったのだとしたら、本当にいたたまれません。(構成=AERA dot.編集部・飯塚大和)