背景には抗菌薬の使いすぎによって発生する耐性菌の問題もあります。抗菌薬が効かない耐性菌は世界的に脅威となっており、それ以外の方法で病原菌を阻止する治療法がどの分野においても期待されているためです。

 すでに研究されているのは乳酸菌の一種の「ロイテリ菌(ラクトバチルス・ロイテリ菌)」で、基礎臨床・研究では歯周病菌を抑制する働きが確認されています。また、ほかの乳酸菌の「LS1」や「WB21」を歯周病患者さんが摂取すると、症状の維持や改善傾向が見られたという報告も出ています。これらの菌が含まれたヨーグルトやタブレットが市販されていますが、あくまでも従来の治療の補助的な位置づけであり、それだけで歯周病を治すというものではありません。

≪まとめ≫
・食品により口の中の善玉菌を増やして歯周病の予防、治療に応用する研究が広がっている
・ロイテリ菌など乳酸菌の一部に歯周病菌に作用する可能性のあるものが出てきた

※『続・日本人はこうして歯を失っていく』より

≪著者紹介≫
日本歯周病学会/1958年設立の学術団体。会員総数は11,739名(2020年3月)。会員は大学の歯周病学関連の臨床・基礎講座および開業医、歯科衛生士が主である。厚労省の承認した専門医・認定医、認定歯科衛生士制度を設け、2004年度からはNPO法人として、より公益性の高い活動をめざしている。

日本臨床歯周病学会/1983年に「臨床歯周病談話会」としての発足。現在は、著名な歯周治療の臨床医をはじめ、大半の会員が臨床歯科医師、歯科衛生士からなるユニークな存在の学会。4,772名(2020年3月)の会員を擁し、学術研修会の開催や学会誌の発行、市民フォーラムの開催などの活動をおこない、アジアの臨床歯周病学をリードする。