(イラスト/渡辺裕子)
(イラスト/渡辺裕子)

「歯周病」という病名は広く一般の方々に認知されるようになりましたが、最新の研究では、歯周病は歯や口の中だけでなく、全身の健康とも大きくかかわっていることが分かってきています。日本歯周病学会・日本臨床歯周病学会は、最新研究をもとに、国民に歯周病について正しい情報を伝える公式本『続・日本人はこうして歯を失っていく』を発刊しました。本書から抜粋して、「腸内細菌」「プロバイオティクス」について紹介します。

*  *  *

■歯周病菌は腸内細菌にも影響する!

 腸はからだの中で最大の免疫系といわれています。その特徴は約100兆個もの腸内細菌(腸内細菌叢)で、善玉菌と悪玉菌が共生しています。善玉菌は乳酸や酪酸などを作り、悪玉菌の増殖を抑えて病原菌の感染や発がん物質の産生を抑制する働きがあります。このように善玉菌の働きを優勢に保つことが健康につながるわけです。

 この重要な腸内細菌叢のバランスに口の中の細菌が関係していることがわかってきました。

 新潟大学のグループは、歯周病菌のP.g菌をマウスに口から投与して、その影響が全身にどのようにあらわれるかを調べました。その結果、血管の炎症反応、脂質代謝の変動(人間における脂質異常症のような変化)、糖尿病で見られる耐糖能異常とインスリン抵抗性の誘導などが確認されたと同時に、腸内細菌のバランスが乱れること(ディスバイオーシス)がわかったのです。

 ほかには歯周病菌が腸内細菌の中から見つかったという研究報告が複数、出てきています。腸内環境を整えるためにも歯周病対策が重要といえそうです。

≪まとめ≫
・腸はからだの中の最大の免疫系であり、その働きは主に腸内細菌が担っている
・歯周病菌など口の中の細菌が腸内細菌叢のバランスを悪化させる可能性がある

■食べることで歯周病予防できる善玉菌がある

 口の中には700種類以上の細菌が生息し、腸に次いで細菌数が多い場所です。歯周病が全身の病気に深くかかわることが明らかになっている現在、腸内環境と同じように口の中の細菌叢のバランスを整える食品等の摂取により、歯周病の予防・治療を目指す考え方が広がってきています。「プロバイオティクス」と呼ばれるものです。

次のページ
すでに研究されている乳酸菌では症状の維持や改善傾向