大英博物館「マンガ展」で案内役をも担った『ギガタウン 漫符図譜』やアニメ映画も大ヒットした『この世界の片隅に』などで大人気の漫画家・こうの史代さん。このたびこうのさんが話題沸騰のアマビエを主人公にした新作漫画を描きました! 本作をAERA dot.で特別無料公開するとともに、こうのさんにちょこっとお話を聞いてみました。

【こうの史代さんのアマビエさん漫画5作を一挙公開!漫画全編はこちら】

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――アマビエに興味をもたれたきっかけは?

 元々妖怪は好きですがアマビエのことは知らなかったんです。人から聞いて江戸期に描かれたというその絵を見て、あまりのインパクトの強さに惹かれました。

 日和坊(ひよりぼう)や白髭水(しらひげみず)など妖怪の中には未来を予言するものがおり、アマビエもその一種と言えると思います。でも病が流行る(かもしれない)ということに加え、その際には「自分を描いて見せよ」と対処方法まで教えてくれているのが面白いですよね。

 ちょうど仕事の切れ目でもあったので少し調べている内に面白くなり漫画を描いてみたくなりました。イラストはいろいろな方が描いていたのでやっぱり漫画で、と。

――実際に調べられて、どんなことが面白かったのですか?

 アマビエについての史料は少ないのですが、アマビエの元となったとも言われているアマビコという存在がいるんです。こちらの方が文献ももう少し残っていて。『古事記』でも「~ビコ(~比古)」という神様はよく出てくるので、親しいというか想像しやすいと思いました。アマビコは、猿に近い頭に毛むくじゃらの三本足と、アマビエとはまた少し異なる見た目だったようです。

――「アマビコ」の存在も興味深いですね! 今回の漫画「アマビエさん」のディテールは江戸の原画にほぼ忠実ながら、こうのさんのふんわりしたタッチが入っていますね。

 当初は、たとえば手を付け加えるなど、少しアレンジした容貌で描くつもりでした。でもコンテができた頃にたまたま見た伊藤潤二さんの描かれたアマビエの絵が、伊藤さんの筆致ながら原画にとても忠実だったことに心を打たれました。それで私もオリジナル要素を加えるのはやめにしました。

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目がひし形なのは?