大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)
大人は思いつかないような、子どもの素朴な疑問や不思議。子どもの頃から、納得できる答えが得られないままになっていること。そんな質問に、テレビやラジオなどでも活躍する明治大学教授の石川幹人(まさと)さんがお答えします。ジャンルを問わず、答えが見つからない質問をお寄せください!(https://publications.asahi.com/kodomo_gimon/)。採用された方には、本連載にて石川幹人さんが、どこまでもまじめに、おこたえします(撮影/写真部・掛祥葉子)

※写真はイメージです(Getty Images)
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 発想豊かな子どもの疑問に大学教授が本気で答える連載「子どもの疑問に学者が本気で答えます」の番外編。新型コロナウイルスに関連した子どもたちの疑問に答えます。新型コロナウイルスに一度感染すると二度とかからないのはなぜなのか、明治大学教授の石川幹人さんが答えてくれました。

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【Q】一度かかったウイルス性の感染症に二度かからないのはどうして?

【A】ウイルスへの防御体制が体に記憶されているからです。

 ウイルスは、生物の遺伝情報をもった化学物質がたまたまちぎれ、生物と言えるほどの情報がない短い断片が、タンパク質や脂から出来た「カプセル」に包まれたかたちをしています。そのウイルスが感染の対象となる生物の細胞に侵入すると、その生物の遺伝情報を変更しウイルスが増殖されます。

 ウイルスのカプセルの表面には多くの突起があります。一方、感染対象の生物の細胞の表面には多くの穴があります。ちょうど鍵と鍵穴の関係と同じ仕組みで、突起と穴がピッタリ合うことでウイルスが細胞に付着して、遺伝情報が細胞内に侵入します。つまり、ウイルスに感染するかしないかは、このウイルス側の突起のかたちに左右されるのです。

 一方、ウイルスが増殖し始めると、生物の体は異変を感知します。ウイルスを捕えて、その突起を調べ、対抗する仕組みを起動します。この仕組みは「免疫」システムと呼ばれます。

 具体的には、ウイルスがもつ突起に合うY字型のタンパク質である「抗体」を速やかに大量生産します。抗体はウイルスの表面にとりつき、細胞への侵入を阻止します。そのうえ、Y字となった2本の腕の先は、それぞれ別のウイルスの突起に付着できるので、ひとつの抗体がふたつのウイルスを結びつけます。すると、多くの抗体によって多くのウイルスが結びつけられて団子のような塊になり、効率的に排除できるのです。

 ウイルスに感染した後、発病するかどうかは、ウイルスの増殖スピードと免疫システムの防御体制が整備されるスピードの、どちらが速いかが決め手になります。ウイルスが増殖すると健康な細胞がどんどん破壊されていき、病気になります。その前に抗体が大量生産できれば、健康な細胞の破壊を止められ、病気を防げます。また、発病した後であっても、重症化する前に抗体が大量生産できれば、やがて回復するのです。

 十分に栄養や休息をとっておくと病気にかかりにくくなるのは、免疫システムの整備に必要な材料やエネルギーが体内に豊富にある状態になるので、整備されるスピードが十分に速くなるからです。よく食べよく眠るのは、健康の秘訣なのです。

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石川幹人

石川幹人

石川幹人(いしかわ・まさと)/明治大学情報コミュニケーション学部教授、博士(工学)。東京工業大学理学部応用物理学科卒。パナソニックで映像情報システムの設計開発を手掛け、新世代コンピュータ技術開発機構で人工知能研究に従事。専門は認知情報論及び科学基礎論。2013年に国際生命情報科学会賞、15年に科学技術社会論学会実践賞などを受賞。「嵐のワクワク学校」などのイベント講師、『サイエンスZERO』(NHK)、『たけしのTVタックル』(テレビ朝日)ほか数多くのテレビやラジオ番組に出演。著書多数

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感染して回復した場合、どうなる?