引退後は投資家に転身して一時は成功をおさめたが、ほどなくして破産。車の中やホテルのロビーで寝泊まりする生活となり、挙句の果てには自動車泥棒や詐欺、性犯罪などで有罪判決を何度も受けるまで落ちぶれている。ちなみに1986年のワールドシリーズ優勝リングの売値は5万6762ドル(約600万円)だったという。

 散財して破滅するのはメジャーリーガーだけではない。2009年のスポーツ・イラストレイテッド誌の記事では、NBA選手は引退から5年以内に6割が自己破産し、NFL選手も8割近くは引退後2年足らずで破産するか、経済的に困窮するという。

 実際、NBAのブルズで大活躍したランディ・ブラウンや、ヒートなどでプレーしたアントワン・ウォーカーなども優勝リングを手放す羽目になっている。アメリカ以外でも、サッカーのイングランド代表などで大活躍したポール・ガスコインがアルコールや薬物依存で身を持ち崩し、現役時代に1400万ポンド(約18億6000万円)は稼いだ身でありながらホームレス寸前にまで追い込まれたと報じられた。

 もちろん稼いだお金を大事にし、引退後も平穏に過ごす選手たちも存在し、破産した選手たちは自業自得だったと言ってしまえばそれまでだ。同じ優勝リングを手放すにしても、例えばNBA史上屈指の名センターとして知られるカリーム・アブドゥル・ジャバーは現役時代の記念品をオークションで売却して得た収益のほとんどを自身の基金を通じて子供たちへ寄付したという。こういうエピソードならば歓迎できる。

 現役時代の華々しい活躍に魅了されたファンからすれば、スター転落の顛末など聞きたくないというのが本音。億万長者の同僚に囲まれた現役生活で豪華な暮らしと浪費癖が自然と染みついたり、カネの匂いに釣られた取り巻きにそそのかされるといったことも多いだろうが、願わくばアスリートたちには過酷な現役時代の労苦に見合った悠々自適な引退後の時間を過ごしてほしいものだ。※文中の日本円の金額は現在の為替レートで計算

(文・杉山貴宏)