日本の鉄道は、国土交通省に届け出た路線名で案内するのが基本とされている。なかには鉄道事業者が独自の名称を採り入れた電車系統名称、路線名に愛称を入れる路線愛称があり、特に路線愛称は昭和末期から急増した。すっかり定着したものから、まだ定着しきれていないものまで、いろいろな路線愛称を紹介しよう。
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■京浜東北線と埼京線は路線名ではない
品川~田端間で山手線と併走している「京浜東北線」という名称は、実は正式の路線名ではない。大宮~東京間は東北本線、東京~横浜間は東海道本線を走行する。参考までに、山手線の線籍は品川~新宿~田端間で、京浜東北線と同様に田端~東京間は東北本線、東京~品川間は東海道本線である。
京浜東北線の歴史を紐解くと、鉄道院時代の1914年12月18日、東海道本線品川~横浜間が複々線化され、長距離列車用と各駅停車用に分けられた。これに伴い、すでに複々線化されていた東京~品川間とのセットで、「京浜線」という電車系統名称(路線の中で、特定の運転系統の列車に付けられた名称)の祝賀電車が華々しく走行し、2日後の12月20日に営業運転を開始したのが始まりである。当時、東京~品川間の線路は山手線と共用されていた。
京浜線は1925年11月1日から北へ線路が延び、1932年9月1日には東北本線区間の大宮に達したことで、鉄道省は現在の「京浜東北線」に“改称”し、現在に至る。
国鉄時代の1985年9月30日に開業した「埼京線」も電車系統名称である。大崎~池袋間は山手貨物線、池袋~赤羽間は赤羽線、赤羽~大宮間は東北新幹線の隣に建設された東北本線の別線を走る列車を、運転区間からひとつにまとめた名称である。赤羽~大宮間の距離は京浜東北線経由より0.9キロ長いが、定期券は双方の各駅で乗降できる。
このほか、湘南新宿ライン(大宮~新宿~大船間)、上野東京ライン(上野~東京間の別線)も、正式な路線名ではなく、この区間を直通する列車に付けられた電車系統名称である。