13年の現役生活で通算66勝62敗4セーブの数字を残したが、その数字以上のインパクトを見ている人々に与えた。1989年には、セ・リーグ優勝時に胴上げ投手となると、近鉄投手の加藤哲郎が「巨人ロッテより弱い」という意味合いの発言をしたと報道された後に巨人が3連敗から4連勝したことで有名な同年の日本シリーズでも最後を締めたのが宮本。マウンド上で両腕を上げてジャンプしている映像は今でも放送されるので、見たことのある人も多いだろう。

 逆に、92年には同一シーズンに2度の満塁本塁打を打たれるなど、その派手なやられっぷりも巨人ファンの脳裏に刻まれた。現役時代からとても明るく、ひょうきんでお調子者だったキャラクターも相まって、成績以上に注目を浴びる人物だった。

 そういったポジティブで気配りのできる性格から選手の気持ちを汲み、雰囲気を盛り上げる術に長けていると評判は高いが、投手コーチに本来求められる実際の指導力や試合展開を読む眼力はいかほどのものなのか。

「正直、まだわからない。解説者をやっていたとは言っても、ほとんどが芸能人のような仕事をしていた。球場に来て選手のコメントを取っていても、プレーとは関係ないプライベートな話が多い。昨年は、解説でしっかり勉強した水野雄仁が1軍にいた。今年は水野が巡回コーチとなって、宮本の責任が変わってくる。始まってみないとわからないというのが本音」(巨人OB解説者)

 宮本はコーチ1年目から投手総合コーチという肩書ではあったが、監督への進言や具体的な指導は主に水野コーチの役割だった。今年は役職が一軍投手チーフコーチに変わり、真価が問われる1年になる。

 投手陣を見ると、エースの菅野智之にかつてほどの安心感がない上、先発の駒不足は深刻で、中継ぎや抑えも不安が残る。勝ち頭だった山口俊の抜けた穴は大きい。オープン戦では、新型コロナウイルスによる開催中止前までなかなか勝ち星がつかなかったが、果たして今年の巨人は大丈夫なのか。

 涙脆いことで知られる宮本はズムサタ卒業、巨人優勝、ズムサタ凱旋出演時など、ことあるごとにカメラの前で涙を流してきた。それが今年は“悔し涙”にならないよう、巨人投手陣をまとめ上げられるかどうか注目である。